有名手法6本をEA化して実測したら優位性ゼロ、配布EAは2ヶ月で口座が飛んだ

手法検証 · 1 min

YouTubeや教材の有名手法(100億トレード・グランビルの法則200EMA・松山式DEG・エリオット3波ショート・GOLD専用ナンピンEA配布)を言われた通りにコード化して実測した6本の系譜。ほぼ全てが優位性なしか既知の言い換えで、配布EAは開示設定のまま2ヶ月で破綻。実測値だけで振り返ります。

「100億円トレーダー」「0から勝てる」「GOLD専用・高勝率EAを無料配布」。YouTubeや教材で見かける有名手法を、言われた通りにコード化して実測する検証を、これまでに6本やってきました。結論を先に言うと、新しく使える優位性はゼロ。ほぼ全てが優位性なしか既知の話の言い換えで、配布EAは開示された設定のまま動かすと2ヶ月で口座が飛びました。

この記事は6本の検証を1つの系譜にまとめたものです。個々の動画や教材を責めるのが目的ではありません。「実測するとこう見える」という数字を、そのまま並べます。

はじめに: このブログと前提

初めての方向けに。このブログは、私(個人)がFXの自動売買プログラム(EA)を自作し、手法を統計検証して勝敗問わず記録している検証日記です。文中の「研究N」は私の検証ノートの通し番号。検証にはFX・金・株価指数の実データ約11年分を使っています。

用語を4つだけ。PF(プロフィットファクター)=総利益÷総損失で1を超えると黒字。IS/OOS=データを「ルールを決める期間(In-Sample)」と「答え合わせ専用の未使用期間(Out-Of-Sample)」に分けること。前進検証=過去でルールを固定し、その後の未知データで成績を測るやり方。bp(ベーシスポイント)=0.01%のことで、1トレードあたりの平均リターンに使います。

図: ウォークフォワード(前進検証)の考え方。過去でルールを決め、まだ見ていない未来で試します(後出しを防ぐ)。

図: 前進検証の考え方。今回の6本は全てこの土俵で審査しました。

検証の共通ルール

やり方はどの回も同じです。動画や教材が開示しているルールを、そのままコードに落とす。裁量が要る部分(波形認識やラインの引き方)は、EMAの傾きなど客観的な代理で近似し、近似であることを明記する。未来の価格を参照してしまう「リーク」を排除し、同じ実データで検証する。判定は数字だけで行う。

「言われた通りに」が大事なところで、勝たせるための改造も、負けさせるための意地悪もしません。では6本、時系列順にいきます。

1本目: 「100億トレード」(研究54)

書籍『維新流トレード術』やYouTubeで知られる維新の介氏の手法です。核はダウ理論ベースの順張りで、複数の時間軸で環境を認識し、4時間足の押し目買い・戻り売り・トレンド転換を狙う「4つの鉄板パターン」。具体的なMA設定などは非公開なので、開示されている骨格を機械化しました。

8通貨・固定パラメータの前進検証の結果がこちらです。

構成総収益PF勝ち年
ロングのみ-2.9%0.9610年中4年
押し目買い+戻り売り(手法に忠実)-19.0%0.8510年中3年

手法に忠実な「戻り売りあり」の方が大きく負けるのがポイントです。ご本人も「FXは技術のゲーム」と明言していて、稼ぎの本体はラインの引き方や大衆心理の読みといった裁量スキルの側にある。機械化できる骨格には、頑健な優位性は残っていませんでした。

2本目: グランビルの法則の200EMA・3波狙い(研究83)

「0から勝てるグランビルの法則」というゆっくり解説動画の手法です。上昇トレンド中に価格が200EMA(指数平滑移動平均線)へ押しを作り、再上昇する3波の初動を狙います。裁量が要る波形認識はEMAの傾きで近似し、再クロスで買うrecross、EMAタッチからの反発で買うbounce、大きく乖離した後の戻りを狙う逆張りのdeviationの3モードで実装しました。

ISの時点でPFは3モードとも0.96〜1.01。開発用データの段階で、すでにほぼ優位性がありません。前進検証ではrecrossロングが+5.6%、bounceロングが+5.1%とプラスに見えますが、勝ち年はどちらも6年中4年で、私の頑健性基準(6年中5年以上プラス)に届きませんでした。相場の上昇ドリフトに乗っただけの利益です。逆張りのdeviationは-25.4%(6年中2年)で壊滅でした。

3本目: 松山式DEG手法(研究102)

ダウ理論・エリオット波動・グランビルを融合した動画手法です。トレンドライン・ダウ構造・20EMAを抜けて第1波を確定し、フィボナッチ・リトレースメントの押し目で第3波を、リスクリワード(RR)固定の利確で狙います。

6本の中では一番惜しかった手法でした。RR2の構成は前進検証で6年中6年プラス。ところが頑健性を確かめると、限界が見えてきます。RR2.5やEMA50に変えると6年中4年へ緩やかに低下し、SMAの期間を150に変えただけで-6.3%(6年中2年)まで崩壊しました。設定値にここまで敏感なのは、過剰最適化の指紋です。PFも1.09と薄く、既存のトレンド核との相関は0.66。中身は「ロング・トレンドの再発見」で、独立した優位性ではありませんでした。

4本目: エリオット3波狙いショートの客観化(研究153)

動画で語られる「日足で環境認識し、4時間足の戻り売りでエリオット3波を狙う」ショート手法です。日足終値が200日移動平均線の下、4時間足の戻りが200EMA付近で反発、切り上げラインを下に割ったらエントリー、と客観化しました。出口は1波の値幅分を狙う型と、勢いの減衰(ADXの低下やMACDヒストグラムの縮小)で手仕舞う型の2系統です。

クロス円6通貨ペアの4時間足での結果がこちら。

期間出口PF月利
IS(2015-20)1波値幅1.06+0.104%
IS(2015-20)勢い減衰0.93-
OOS(2020-26)1波値幅0.63-0.259%
OOS(2020-26)勢い減衰0.74-0.081%

ISの微プラスがOOSでPF0.63まで崩れる、教科書のような過剰最適化でした。収穫もあります。勢い減衰での利確は最大DD(ドローダウン=資産の山からの下落率)を-16.4%から-6%程度に抑えました。守りは効くが、黒字にはならない。そしてもう1つ、「ラインの強さも波の数え方も勢いの減衰も、工夫すれば数値化して検証できる」と分かったことです。ただし、数値化できることと、そこに優位性があることは別問題でした。

5本目: GOLD専用ナンピンEA配布動画『無水華麗』(研究238)

「GOLD専用・高勝率」をうたうEA無料配布のプロモ動画です。肝心のエントリーサイン(4段階)は非公開ですが、開示情報は拾えました。初期30万円で0.04ロット、利益が乗るごとに増資、ナンピン幅50〜250pips(ボラ連動)、利確4〜13pips、急変時はナンピンをスキップ、損切りは曖昧、含み損が超過したら両建て、というものです。

宣伝された3つのロジックの正体はこうでした。「不規則性評価」はランダムウォーク・フィルタ。「流動性歪み吸収」は時間軸をまたぐ逆行の解消で、代理検定では金の押し目買いに+5.55bpの効果が見えますが、これは私のEAが既に収穫している金ロング押し目の言い換えで、新規性はありません。「動的最適化」はボラ連動の利確幅・ナンピン幅のことでした。

決定打は本体のシミュレーションです。開示パラメータに忠実なナンピン複利を、善意のスプレッド設定で金の15分足11年分に流すと、開始2ヶ月後の2015年3月10日に資産ゼロで破綻。最大11段のナンピンを抱え、プロップ口座換算の最悪日次は-101.92%でした。エントリーサインが何であれ、損切りなしのナンピン複利という資金管理構造である限り、「高勝率の見かけ×稀な全損」という分布は変わりません。

図: モンテカルロの考え方(シミュレーション例)。あり得た口座の運命を何千通りも再生し、運の幅ごと評価します。

図: 口座の運命を分布で見る考え方。高勝率の見かけの裏に「稀な全損」が潜む構造は、平均値だけでは見えません。

6本目: 同じ動画を疑って測り直した追補(研究238追補)

前の検証には、自分でツッコミを入れました。3つの宣伝ロジックのうち2つを「過去の研究で否だったから」という引用で済ませていたからです。ゼロベースで測り直す方針に反するので、全部いまのデータで実測し直しました。

不規則性評価は40セルの総当たりで再測定。「規則性が高い時だけ入る」フィルタは買い側の成績を一貫して悪化させました(素+5.65bpがフィルタ後-3.5bp)。流動性歪み吸収は、同レジーム内のランダム対照200本との比較で売り側にだけ足跡がありました(+4.04bp対+2.06bp、p=0.025)。ただし未使用データで4分の1に減衰し、コスト後はほぼゼロ。「微弱に実在するが使えない」が正確な判定です。動的最適化のDD抑制主張は3変種の直接対決で判定しました。皮肉なことに、動画どおりのボラ連動+急変スキップ版が3変種の中で最速で破綻(2015年3月)。固定幅版より早く、主張と実測が真逆でした。

引用による棄却は「自分の設定なら違うかも」という反論の余地を残します。実測で棄却すれば、その余地ごと消えます。結論は変わらず否ですが、根拠の質が変わりました。

6本並べて見えた3つの型

検証実測の要点判定
100億トレード前進 -2.9%/PF0.96(ロングのみ)頑健な優位性なし
グランビル200EMAIS PF0.96〜1.01優位性なし
松山式DEGPF1.09・SMA150で2/6年に崩壊トレンド再発見
エリオット3波ショートOOS PF0.63/月利-0.259%過剰最適化
ナンピンEA配布(本体)2ヶ月で破綻・最悪日次-101.92%使えない
同・3ロジック再実測3概念とも否変わらず否

1つ目の型は、機械化すると「ロングでトレンドについていく」に収束すること。ダウ理論もエリオット波動もグランビルもフィボナッチも、どう融合しても最後は同じ形に落ち着き、既存のトレンド手法との相関だけが残りました。

図: トレンドフォロー(ブレイクアウト)のシグナル例(実データ)。

図: 収束先のイメージ。有名手法を機械化していくと、結局この「トレンドに乗るロング」の言い換えに行き着きます。

2つ目は、稼ぎの本体が機械化しにくい裁量部分にあること。波形認識やラインの引き方を客観的な代理で置き換えた瞬間、優位性が消える。これは手法が嘘だという意味ではなく、「ルールとして開示されている部分には優位性がない」という実測です。

3つ目は、「高勝率」の見かけは資金管理構造で作れること。損切りなしのナンピンは勝率を高く見せながら、稀な全損を裾に隠します。勝率を見せられたら、負けた日に何が起きるかを聞く。これが6本分の授業料で買った質問です。

私はこれらの動画や教材を詐欺だと断定しません。裁量スキルの部分は測っていませんし、測れないものを否定はできません。言えるのは1つだけ。開示されたルールを言われた通りにコード化して実測したら、6本とも私のシステムに採用できるものは残らなかった、ということです。

この記事は研究54/83/102/153/238を統合したものです。