PF1.81でも不採用、EAに足す新戦略を12機構試して全滅した記録

却下手法 · 1 min

トレンド核とConnors逆張りの2本柱に足す「値動きの重ならない第3の戦略」を探した全記録。ショート・レジーム切替・中期逆張り・52週高値モメンタム・スクイーズ・週足逆張りなど12機構がどの関門でどう落ちたか。前進検証まで通過したPF1.81の候補を捨てた理由と、探索を閉じた構造的な結論まで。

PF1.81、既存システムとの相関0.07、未知データでの前進検証も通過。ここまで条件の揃った新戦略を、私は最後の審査で捨てました。この探索ではそんな「惜しい候補」が何度も現れて、結局ぜんぶ落ちています。試した機構は12種類、採用はゼロ。

この記事は、EAのポートフォリオに足す「無相関の新戦略」を探した6本の検証(研究124/128/129/131/132/133)を1つの物語にまとめたものです。全滅の記録ですが、終盤で見えてきた構造、つまり「なぜ何を足してもダメなのか」の答えこそが、この探索いちばんの収穫でした。

はじめに: このブログと、読むのに必要な前提

初めての方向けに。このブログは、私(個人)がFXの自動売買プログラム(EA)を自作し、手法を統計検証して勝敗問わず記録している検証日記です。文中の「研究N」は私の検証ノートの通し番号です。

用語を5つだけ。スリーブ=ポートフォリオを構成する個別戦略のこと。PF(プロフィットファクター)=総利益÷総損失で、1を超えると黒字。DD(ドローダウン)=資産の山からの下落率で、登山でいう「どれだけ下りに転じたか」。相関=2つの戦略の値動きの似通い具合(+1で同じ動き、0で無関係)。前進検証=データを「ルールを選ぶ期間(IS)」と「答え合わせ専用の未使用期間(OOS)」に分けて、選んだ後の実力を測ること。あとMC(モンテカルロ合格率)という指標も出てきます。これは日次リターンを再標本化して、プロップファーム(合格すると資金を貸してくれる業者)のルールを生き残れる確率を推定した値です。

出発点: 2本柱はどちらもロングだった

当時のシステム(v1.5.0)は2本柱でした。トレンド相場を追いかける核となる戦略と、Connorsと呼ばれる押し目買い(200日移動平均より上でRSI2が10以下に沈んだら買う、超短期の平均回帰)。どちらもロング、つまり上昇相場が主戦場です。

図: Connors RSI2 のエントリー例(USDJPY 日足・実データ)。200日SMAより上で RSI(2) が10以下に沈んだ押し目を買います。

図: 2本柱の片方、Connors RSI2の押し目買い。この記事に出てくる候補の多くが「結局これと同じ動き」で落ちます。

じゃあ相場が下降やレンジに入ったら?と思いますよね。そこがこのシステムの穴でした。核が沈むときに逆に稼いでくれる、値動きの重ならない第3のスリーブがあれば、DDはもっと滑らかになるはず。この「無相関スリーブ探し」が今回の全行程のテーマです。

研究124: ショートとBB逆張り、最初の空振り

まず素直な2候補から。下げ相場の穴を埋めるならショート、押し目買いの親戚ならボリンジャーバンド(BB)逆張りです。

候補月利PF落ちた理由
BB逆張りロング+0.14%1.63Connorsとの相関+0.45で冗長
Connorsショート+0.09%1.26前進検証でPF0.87/月-0.04%に崩壊

BB逆張りは数字自体は悪くないのに、Connorsとの相関が+0.45。要するに同じ押し目を別の物差しで買っているだけで、分散効果が薄い。

本命だったConnorsショート(下降地合いの戻り売り)は、全期間ではPF1.26/月+0.09%、核との相関-0.13と理想的に見えました。ところが2015〜2020年で選抜して2020〜2025年の未使用データで答え合わせすると、PF0.87/月-0.04%/Sharpe-0.29まで崩壊。全期間の魅力は選択バイアス、つまり過去に合わせ込んだ幻でした。「ショートは足を引っ張る」という過去の教訓の再確認です。

研究128: 相場に合わせて切り替える案は根拠ゼロ

次は発想を変えて、新しい戦略を足すのでなく、手持ちの2本柱を賢く切り替える案。トレンドが強いときは核へ、弱いときはConnorsへ資金を寄せれば、固定配分より効率が良いのでは?

判定にはADX(トレンドの強さを測る指標)を使う想定でした。ところが実データで測ると、ADXの強さと「核とConnorsのどちらが勝つか」の相関は-0.035。ほぼゼロです。分位で見ても単調な関係はなく、レジーム(相場の局面)からどちらが勝つかは予測できませんでした。

理由を掘ると納得でした。Connorsは上昇トレンドの最中の小さな押し目でも稼ぎ、核のブレイクはレンジ相場の中でも発生する。2つのエッジは局面できれいに分かれておらず、固定配分が既に両方を取り込んでいたんです。切り替えはタイミングを外すリスクを足すだけ。不採用です。

研究129: 時間軸を変えた逆張りはゼロ件

Connorsが超短期(RSI2)なら、中期(RSI14)の逆張りは別のタイミングで動く新スリーブになるのでは。これも自然な発想でしたが、結果は全銘柄でPF1.05超がゼロ件。エッジ(統計的な優位性)そのものがありませんでした。

図: 逆張り(RSI)のシグナル例(EURUSD 日足・実データ)。RSIが売られすぎ圏に入った反発を狙います。

図: RSIの逆張りのイメージ。同じ逆張りでも、期間を2から14に伸ばしただけでエッジは消えました。

ここで大事な洞察が1つ。平均回帰のエッジは、2日ほどの激しい投げ売りが行き過ぎて反動で戻る「オーバーリアクション」に特化した現象のようです。RSI14が拾うような緩やかな下げは、反発ではなくそのままトレンドとして続いてしまう。つまり平均回帰で取れる利益は、Connorsが既に唯一の水脈を押さえていたことになります。

研究131: 本物のモメンタムを足したらDDが倍近くになった

ここからは新機構をまとめて流すバッチ検証です。第1弾は4機構。

機構主な数字落ちた理由
連続陰線の逆張りPF1.28Connorsとの相関0.73で冗長
52週高値モメンタムPF1.58(OOSでPF1.33)併走でDDが-9.4%から-16.7%に悪化
過大陰線の反転エッジ確認0銘柄優位性なし
週足Donchianブレイク対象2銘柄のみ機会が極小

注目は52週高値モメンタムです。過去1年の高値更新の勢いに乗る手法で、単体PF1.58、前進検証もOOSでPF1.33/Sharpe0.38と通過。数字だけ見れば本物のモメンタムです。

図: ブレイクアウトのエントリー例(XAUUSD 日足・実データ)。直近の高値を上抜けたところで買います。

図: 高値ブレイクを買うモメンタムのイメージ。単体では優秀でも、既存のトレンド核と「同じ山」に登っていました。

ところがv1.5.0と併走させると、最大DDは-9.4%から-16.7%へほぼ倍増、MCは96%から85%へ低下、DDを10%に揃えた換算の月利は0.99%から0.63%に下がりました。核との相関0.43が示す通り、これは「トレンドの再発見」。既存の核と同じ局面にリスクを積み増しただけで、登山でいえば全員が同じルートに固まり、崩落時に全員巻き込まれる形です。単体で優秀な戦略が、足すと害になる。この探索で何度も見る光景の始まりでした。

研究132: PF1.81、無相関、前進検証通過。それでも不採用

第2弾の3機構が、この物語のクライマックスです。

機構PFSharpe相関判定
VWAP乖離の逆張り1.630.96Connorsと0.52冗長で不採用
安値引けの逆張り1.351.39Connorsと0.55冗長で不採用
BBスクイーズ・ブレイク1.81-核と0.07/Connorsと0.13併走悪化で不採用

逆張り系の2つはまたしてもConnorsとの相関が0.5超え。もう驚きません。問題は3つ目、ボラティリティが収縮した後のブレイクを狙うBBスクイーズです。PF1.81、核との相関0.07、Connorsとも0.13でほぼ独立、前進検証もOOSでPF1.36(71取引)と通過。冒頭で触れた、条件が全部揃った候補がこれです。

ところが併走させると、最大DDは-9.4%から-13.3%へ悪化、DD10%換算の月利も0.99%から0.74%に低下しました。日次の相関があれほど低かったのに、なぜ?

答えがこの探索最大の学びです。日次相関が低いことと、DDが分散されることは別物でした。スクイーズ・ブレイクも本質はトレンドを買う戦略です。日々の値動きは核とズレていても、トレンドが反転したりリスクオフで相場が急変したりする「沈む日」は同時に来る。晴れの日は別行動なのに、嵐の日だけ一緒に濡れるわけです。

スリーブが本当に足し算になるには、核が負けているときに稼ぐ「DDの逆動」が必要で、それを満たせるのは短期の平均回帰だけ。そしてその席は、Connorsが既に埋めていました。

研究133: 週足も落ちて、探索を閉じた

最後のバッチは週足の平均回帰(週足RSI3)。結果は正のエッジが0銘柄で、あっさり終わりました。週足は取引数が少なすぎるうえ、研究129で見た通り平均回帰のエッジは超短期特化。時間軸を伸ばす方向に道はありませんでした。

そして総括です。研究124から133までに試した機構は12種類。ショート、BB逆張り、レジーム切替、中期逆張り、52週高値モメンタム、スクイーズ、週足逆張り。すべて不採用でした。

落ちた理由は4つに収束する

12機構の死因を並べると、きれいに4パターンしかありません。

死因中身
トレンドの再発見核とDDが同時化して足し算にならない52週高値Mom、スクイーズBO
Connorsと冗長同じ押し目を別の物差しで買うだけBB逆張り、VWAP乖離、安値引け
エッジなしそもそも優位性がない中期RSI14、過大陰線、週足逆張り
コスト負け薄い利益が手数料で消える高回転の候補全般

価格が利益を生む源泉は、大きく「トレンド」と「短期的な反転」の2つしかなく、うちのシステムは既に両方を使っている。だから何を足しても、上の4つのどれかに吸い込まれてしまう。これが12連敗の構造的な正体です。

これ以上力任せに機構を列挙し続けると、今度は偶然データに適合しただけの偽の成功を掴むリスク(データ浚渫)が高まります。天井と断定はしませんが、この方法での探索はここで閉じ、次の改善は新しいデータか別の資産クラスに求める。それがこの時点の結論でした。

全滅から持ち帰ったもの

収穫ゼロだったかというと、そうは思っていません。まず、Connorsという追加スリーブがどれほど希少な存在だったかが、12機構の屍で証明されました。トレンド以外で機能する本物は、探し尽くしてもあれ1つだったんです。

もう1つは審査基準そのものの更新です。新しい候補を見るとき、日次相関の低さではなく「核が沈む日に稼げるか」を最初に問う。単体の成績表がどれだけ立派でも、併走時のDDが答えです。PF1.81を捨てたあの判断は、いま振り返っても正しかったと思っています。

この記事は研究124/128/129/131/132/133を統合したものです。