裁量の天井は実在するが登る梯子が全部折れていた

却下手法 · 1 min

研究214として、現行のシステム「wgap」に裁量的な判断ルールを組み込んで強化できないか検証しました。結論から言うと、今回の試みは「不採用」です。

図: 週末ギャップ・フェードの実例(GBPNZD 1時間足・実データ)。週末をまたいだ下ギャップの埋め戻りを取りに行きます。

図: 週末ギャップ・フェードの実例(GBPNZD 1時間足・実データ)。週末をまたいだ下ギャップの埋め戻りを取りに行きます。

研究214として、現行のシステム「wgap」に裁量的な判断ルールを組み込んで強化できないか検証しました。結論から言うと、今回の試みは「不採用」です。

裁量ルールで強化できる可能性はあるか

検証のベースとしたのは、すでに優位性が確認できている「wgap(10銘柄、勝率68.8%、PF2.30、月利+0.763%)」です。ここに、「もしプロのトレーダーが判断するならこうする」という裁量ルールを機械的に適用して、成績が向上するかを確認しました。 まず「オラクル天井」という仮説を立てました。これは、相場が反転する理想的なポイントで正確に手仕舞いできた場合の理論上の利益です。計算してみると、完璧な判断ができれば現在の利益にプラスして最大で約78%もの上乗せが可能だと分かりました。この「理論上の天井」が非常に高いことから、裁量的なフィルタリングを研究する価値はあると考えました。

12個の条件を試したが…

次に、相場の環境を判断するための12個の条件(バッテリー)を網羅的にテストし、統計的に意味のある結果が出るかを確認しました。

  • 選別された12条件のうち、生き残ったのは「er_high(カウフマン効率比という指標で、相場がきれいなトレンドを描いているかを示すもの)」のみでした。
  • 残りの11条件は、統計的な有意性が認められず、すべて「ただの偶然」という結果になりました。

フィルタと傾斜サイジングの罠

er_highという唯一の「使える条件」を使って、さらに詳細な検証を行いました。

  • フィルタリング(er_highのときだけ取引する):PF(プロフィットファクター=総利益÷総損失。1を超えると黒字)は2.98まで向上しましたが、取引回数が減ることで月利は+0.763%から+0.373%まで低下しました。
  • 傾斜サイジング(er_highのときだけロットを大きくする):全期間のデータで見るとPFやDD(ドローダウン=資産の山からどれだけ下落したか)が改善し、一見すると非常に魅力的な結果に見えました。 しかし、データを「検証用(IS)」と「未知の期間(OOS)」に分けて厳密に審査すると、正体が判明しました。IS期間では成績が向上したものの、OOS期間では月利がマイナスに転じ、DDも悪化しています。これは、特定の過去期間にだけ最適化された「カーブフィッティング(曲線当てはめ=過去のデータに無理やり合わせ込むこと)」に過ぎませんでした。

今後の運用方針

今回の検証で、「裁量条件を追加して現行システムを強化する」という経路は、wgapにおいても閉じていると判断しました。wgapは余計な条件を付け加えず、今のままのシンプルな形で運用するのが正解のようです。 今後、他の手法や条件を無理に重ねるよりも、今のシステムをどう活かすかという観点に集中します。

チャレンジ口座の運用設定(研究213 追補)

あわせて、次のチャレンジ口座に向けた「静的k(フラットガードの維持設定)」の検証結果も共有します。kの値を2.5から3.0まで変えて2万回試行したところ、以下の傾向が見えました。

設定値(k)合格までの日数(中央値)1年以内の合格率失格経験率参加費(コスト)
2.598日93.7%16.1%14,964円
2.889日95.2%20.6%15,888円
3.082日96.2%22.6%16,261円
kの値を上げるほど、合格までのスピードは早まりますが、同時に失格のリスクも高まります。これは「早く結果を出すか、安定を優先するか」のトレードオフです。次のチャレンジ口座では、この結果を踏まえてk=2.8〜3.0を採用する予定です。現行の口座は安定重視で2.5のまま据え置きます。

この検証のつながり

この検証は、過去の次の検証を踏まえています(前回ダメだった→今回こうした、別ロジックとの比較など)。