
裁量の言い分12種を機械化して全部測った
裁量トレーダーが口にする「トレンドが出ているときだけ」「ボラティリティが煮詰まったら」といった条件を、機械的に検証できるライブラリを実装しました。

図: Connors RSI2 のエントリー例(USDJPY 日足・実データ)。200日SMAより上で RSI(2) が10以下に沈んだ押し目を買います。
裁量トレーダーが口にする「トレンドが出ているときだけ」「ボラティリティが煮詰まったら」といった条件を、機械的に検証できるライブラリを実装しました。 これまでは「この手法は裁量を加えると良くなるはずだ」という仮説を立てても、その裁量条件が本当に有効なのか、単なる偶然なのかを判別するのが困難でした。そこで、よくある裁量概念を12個のルール(ADX、RSI、移動平均の並び順など)として数値化し、バックテスト結果に対して「後付け」でスコアリングできる仕組みを作りました。 この仕組みでは、条件をたくさん試すほど「偶然うまくハマる条件」が見つかりやすくなるという統計上の罠を避けるため、BH-FDR補正という手法で有意性を厳しく判定しています。
裁量条件は手法を救えるのか
2015年から2026年までのデータを用いて、2つの手法でこのライブラリをテストしました。
| 手法 | 床(フィルタなし)の成績 | 裁量フィルタ適用後の結果 |
|---|---|---|
| Case A: EmaCrossPullback | PF 0.78 / 月利 -0.03% | 12条件すべて非有意(全滅) |
| Case B: Connorsスリーブ | PF 1.44 / 月利 +0.22% | 12条件すべて非有意(全滅) |
| Case Aのように、そもそもベースの手法が弱い場合、「トレンド判定」などの裁量条件を重ねても結果は改善しませんでした。最良の条件でも、統計的に意味のある「壁」を全く超えられなかったのです。 | ||
| 驚いたのはCase Bの結果です。一見すると、特定の条件(ボラティリティの収束など)を加えるとPFが1.69まで向上するように見えます。しかし、統計的に精査すると、これも偶然の範囲内でした。しかも、フィルタをかけることで取引回数が減り、結果として月利はフィルタなし(床)を下回ってしまいました。これは「厳選」という名目でフィルタをかけるほど、取引機会というコストを支払うだけで、利益率はむしろ悪化するという「改悪」の状態です。 |
検証基盤としての結論
今回のライブラリは、手法の良し悪しを判定する標準的なフローとして採用します。 今後は、ネットで見かける手法を機械化し、まずはこの12種の裁量条件をすべて当ててみます。そこで統計的に生き残った条件だけを精密に再検証することで、「裁量込みの手法」を端から端まで反証できるようになります。 今後はこの仕組みをベースに、条件のパラメータを細かく振ったり、条件同士を組み合わせたりして、本当に意味のある「プラスの期待値」がどこに隠れているのかを突き止めていく予定です。
この検証のつながり
この検証は、過去の次の検証を踏まえています(前回ダメだった→今回こうした、別ロジックとの比較など)。
関連コード(再現用)
この検証は以下のスクリプトで再現できます(リポジトリ参照)。
btengine/judgment.py