『最後は裁量』を測定可能にする装置を作った

平均回帰 · 1 min

「最後は裁量で判断する」という言葉を耳にすることがありますが、本当にその裁量が利益に直結しているのか、それとも単なる思い込みなのかを客観的に測る仕組みを作りました。

「最後は裁量で判断する」という言葉を耳にすることがありますが、本当にその裁量が利益に直結しているのか、それとも単なる思い込みなのかを客観的に測る仕組みを作りました。 今回実装したのは、裁量判断を科学的に検証するための3つのツールです。

  1. 裁量ブラケット法:機械が生成した候補に対し、裁量なしの「床(すべて採用)」、未来の正解を知る「オラクル(天井)」、そして「ランダム」の3つを比較。天井がダメならどんな裁量も無意味、床が良ければ裁量不要という基準で手法をふるいにかけます。
  2. 必要スキル曲線:裁量を「不確実な未来をどれだけ正確に当てられるか(κ)」という数値でモデル化。目標とするPF(プロフィットファクター=総利益÷総損失。1を超えると黒字)や月利を達成するために、どれだけの精度が必要かを逆算します。
  3. 人間裁量のブラインド測定:過去のチャートを使い、未来を知らない状態で「買うか・見送るか」をクイズ形式で回答。統計的に実力(κ)を算出します。 この仕組みを使い、2つの手法を検証してみました。

検証1:EmaCrossPullback(USDJPY H4)

動画などで「勝率80%」と紹介されている手法です。検証したところ、裁量なしの「床」ではPF 0.78、月利マイナス0.03%という結果でした。 驚くべきは、オラクル(完璧な裁量)を導入しても月利はプラス0.10%が限界だったことです。勝率80%を達成するには、未来を当てる精度κが0.60必要(3回に2回未来を知るレベル)という試算になり、現実的ではありません。「裁量で勝率80%」という主張は、必要情報量が非現実的であることと、仮に本当でも利益がほとんど出ないという二重の理由で棄却されます。

検証2:Connorsスリーブ(11銘柄D1ロング)

こちらはすでに機械的な優位性(エッジ)が確認できている手法です。裁量なしでPF 1.44、月利プラス0.22%でした。 ここに人間が裁量で「厳選」を加えてみたところ、精度κが0.30に満たない場合、ただの改悪になることが分かりました。すでに機械的な優位性がある手法に、曖昧な裁量を重ねるのはリスクでしかないという定量的根拠です。

検証結果と今後

これらのツールは、今後検証を行う際の標準ステップとして採用します。 特に重要なのは、自身の裁量を過信しないことです。資金を投じる前に「ブラインド測定」を行い、自分の判断精度(κ)が統計的に有意であると確認できるまでは、資金を入れないのが最も賢い順序といえます。 今後は、YouTubeで公開されている手法を自動で機械核に落とし込み、この検証フローに流し込むパイプラインを構築します。また、LLM(大規模言語モデル)を裁量の代理として使い、人手を介さずに裁量ルールの情報量を測定する実験も進めていく予定です。

この検証のつながり

この検証は、過去の次の検証を踏まえています(前回ダメだった→今回こうした、別ロジックとの比較など)。

関連コード(再現用)

この検証は以下のスクリプトで再現できます(リポジトリ参照)。

  • btengine/discretion.py
  • scripts/tools/discretion_quiz.py