
大損の解剖から生まれた株ショックガードの話
今回は、EA運用における「ドローダウン(資産の山からの下落率)」の正体を突き止め、それを回避することで、逆にリスクを取って収益を伸ばせるかという検証を行いました。

図: モンテカルロの考え方(シミュレーション例)。あり得た口座の運命を何千通りも再生し、運の幅ごと評価します。
今回は、EA運用における「ドローダウン(資産の山からの下落率)」の正体を突き止め、それを回避することで、逆にリスクを取って収益を伸ばせるかという検証を行いました。
ドローダウンを解剖してみる
まず、過去の運用で最も資産が減った「ワースト日」や「最大ドローダウン」のエピソードを詳しく分析しました。当初の仮説では「ボラティリティ(価格変動の激しさ)が高い時にやられる」と考えていたのですが、結果は全く逆でした。 ワースト日は、高ボラ局面ではなく「勝った直後」「建玉満載」「円安ラリー進行中」といった、いわば調子が良い時の直後にやってくることがわかったのです。ボラティリティを基準にしたロット調整(vol-target)が、すでに激しい変動局面をうまく避けていたため、むしろ「順調に積み上がったポジション」が急変に巻き込まれる構造でした。 特に目立ったのは、複数の手法(スリーブ)が同時に被弾するケースです。
- sat2:5銘柄同時ロングなどの相関で、大統領選などの急落時に被弾する筆頭。
- connors×index:株価指数が暴落する際に、押し目買いを狙うロジックと指数ロングが重なり、ダブルパンチを食らう。
唯一有効だった「株ショックガード」
これらを回避するために様々なフィルターを試しましたが、ほとんどは効果がありませんでした。唯一、明確な改善が見られたのが「US500(S&P500)の5日リターンがマイナス3%を超えたら、特定のロジック(connors/connls/index)のリスクを5日間半分にする」というルールです。 これを導入すると、最悪の日次損失はマイナス3.15%からマイナス1.86%へ、最大ドローダウンもマイナス8.80%からマイナス6.88%へ改善しました。それでいて月利の減少は1%未満(プラス0.982%→0.943%)と、非常に効率が良いガードです。
リスク管理の強化と収益の向上
このガードを導入した状態で、プロップファームの合格基準などをシミュレーションするMC(モンテカルロ合格率=日次リターンを再標本化して破綻確率を推定したもの)を再計算しました。 驚いたことに、同じ破綻リスクを許容するなら、これまでよりも積極的にリスクを取れることがわかりました。具体的には、資金管理の係数(kcap)を1.5から2.2まで引き上げることが可能になり、月次出金ベースでプラス45%(1.065%→1.539%)の利益向上が見込めます。保守的に運用してもプラス20%の向上が狙える計算です。
今後の実装に向けて
この「株ショックガード」は、単発的なイベント(COVIDショックなど)に依存せず、安定して効果を発揮することが確認できました。実装としては、US500の条件を満たした際に、該当ロジックの新規リスクを半分にし、既存の建玉も半分決済する形になります。 ただし、sat2が引き起こすような急激なショック(2016年の米大統領選型など)には、このフィルターだけでは対処しきれないことも判明しました。今後は、個別の建玉数に上限を設けるといった「建玉ヒートキャップ」と、今回のガードを組み合わせることで、さらなる安定化を目指す予定です。
この検証のつながり
この検証は、過去の次の検証を踏まえています(前回ダメだった→今回こうした、別ロジックとの比較など)。