
株の寄引けデイトレ26案、未来のデータで全滅
株式の「寄付きで買って、大引けで売る」というデイトレード戦略に、統計的な優位性(エッジ)があるのかを検証しました。

図: ウォークフォワード(前進検証)の考え方。過去でルールを決め、まだ見ていない未来で試します(後出しを防ぐ)。
株式の「寄付きで買って、大引けで売る」というデイトレード戦略に、統計的な優位性(エッジ)があるのかを検証しました。 手元にあるTradingView由来の日足データ(105銘柄、約2年分)を使い、始値と終値が確定している「寄引け」型の戦略に絞って、26種類の仮説を審査しました。検証にあたっては、土日データや出来高ゼロといったゴミデータを排除する品質ゲートを設けています。
IS(学習期間)で有望に見えた6つの仮説
まず、過去データ(IS:2025年9月まで)で審査したところ、6つの仮説が一定の基準(PF 1.15以上など)をクリアしました。
| 仮説名 | 平均リターン | t値 | PF |
|---|---|---|---|
| 前日3%下落後の寄り買い | +37.4bp | 4.68 | 1.40 |
| 前日安値割れ後の買い | - | 3.63 | 1.20 |
| 2%上昇ギャップ後の売り | - | 2.92 | 1.25 |
| 前日レンジ下位での買い | - | 3.33 | 1.15 |
| ※bpはベーシスポイント(0.01%)、PF(プロフィットファクター)は総利益÷総損失で1を超えると黒字。 | |||
| 一見すると、強い平均回帰の優位性があるように見えます。しかし、ここからが本番です。 |
OOS(未知の期間)で全滅した理由
この6つの仮説を、2025年10月以降の未知のデータ(OOS)に適用したところ、すべて機能しませんでした。 期待していた「前日3%下落後の買い」は、OOSではリターンがわずか+4.8bp(t値0.62、PF 1.04)まで低下し、統計的な有意性が消滅しました。他の仮説も同様にマイナス圏へ沈むか、有意とは言えない数値に落ち込んでいます。ランダムな組み合わせで検証しても頑健な結果は得られず、これらは単なる過去データへの過剰適合(カーブフィッティング)だったことがわかります。
なぜデイトレは株で勝てないのか
根本的な原因は、株式市場の構造にあります。 検証を通じて、無条件の日中ドリフト(寄付きから大引けまでの値動き)を調べましたが、ISでは有意だったものが、OOSではリターンがほぼゼロ(+1.1bp)になり消滅しました。 一方で、オーバーナイト(前日の終値から当日の寄付き)のリターンは、IS・OOSを通じて安定してプラスを維持しています。株式市場において、持続的なリターンは夜間に発生しており、日中のデイトレードは「安定したドリフトが存在しない時間帯」をわざわざ選んでトレードしているようなものなのです。さらに、数bp程度のわずかな優位性も、往復のコスト(スプレッド等)で相殺されてしまいます。
検証結果のまとめ
今回の検証では、日足ベースで判断可能な「寄引けデイトレード」に、頑健なテクニカル・優位性は見当たりませんでした。
- 過剰適合の罠: ISで有意に見えた平均回帰戦略も、OOSではすべて通用しなくなりました。
- 構造的な問題: 株式のリターンは夜間に宿っており、日中に安定したドリフトを求めるのは構造的に不利です。
- コストの壁: FXのORB(寄り付きブレイクアウト)検証時と同様、わずかな利益はコストで消えてしまいます。 今後、もし日中の戦略を検証するなら、日足の寄引けではなく、より詳細な日中足データの整備と、オーバーナイトを排除することによる期待値の低下をあらかじめ織り込む必要があります。今回の検証結果から、日足で完結するデイトレード戦略の構築は断念します。
この検証のつながり
この検証は、過去の次の検証を踏まえています(前回ダメだった→今回こうした、別ロジックとの比較など)。