建値ストップが効くのは7スリーブ中1つだけだった

却下手法 · 1 min

過去の検証で出口の最適化(利確の工夫)はことごとく不採用になってきましたが、今回は「含み益を守る」というアプローチで、改めて全スリーブを審査してみました。

図: ブレイクアウトのエントリー例(XAUUSD 日足・実データ)。直近の高値を上抜けたところで買います。

図: ブレイクアウトのエントリー例(XAUUSD 日足・実データ)。直近の高値を上抜けたところで買います。

過去の検証で出口の最適化(利確の工夫)はことごとく不採用になってきましたが、今回は「含み益を守る」というアプローチで、改めて全スリーブを審査してみました。 具体的には、含み益が一定の距離(R=初期の損切り幅)まで伸びた際に、損切りラインを建値まで引き上げる「BE(ブレイクイーブン)」と、含み益の一定割合を確保する「LOCK(ラチェット式で利益を固定)」の2種類です。

なぜ含み益を守る必要があるのか

まずは「そもそも含み益が戻ってきてしまうトレードはどれくらいあるのか?」を確認しました。 トレンド系のロジックを調べると、負けトレードの20%〜41%で、一度は+1R以上の含み益が出ています。一方で、平均回帰や時間で決済するタイプは、そもそもすぐ利確するため構造的に利益の戻り(giveback)がほとんどありません。ユーザーが感じる「せっかく利益が乗ったのに損切りになった」という悔しさは、トレンド系において確かに実在する現象でした。

救済策が招く副作用

しかし、この「戻り」を防ごうとすると、別の場所が削れてしまうのが難しいところです。 トレンド系のロジックで試すと、BEやLOCKを入れたことで月利が横ばい、あるいは劣化するケースが目立ちました。特に、期待していた「+1R到達後に損切りまで戻る」トレードは、相場が大きく動く「テール(大きな利益が出る局面)」を狙うための構造的なコストであることが分かりました。つまり、それをカットすると、大きな利益の芽も一緒に摘んでしまうのです。

sat2だけに見られた例外的な改善

そんな中で、唯一「sat2」というスリーブだけは、この出口戦略と相性が良いという結果が出ました。 sat2は損切り位置が押し安値など遠くに設定されており、決済まで数日かかることもあります。この「時間の長さ」が建値防衛の価値をプラスに転じさせたようです。

指標BASE(変更前)sat2 BE1.0R(変更後)
PF1.621.78
月利+0.318%+0.341%
DD-6.57%-5.38%
※PF(プロフィットファクター=総利益÷総損失。1を超えると黒字)、DD(ドローダウン=資産の山からの下落率)
BE1.0R(含み益が初期損切り幅の1倍に達したら建値へ移動)を採用することで、月利・DD・PFのすべてが改善しました。OOS(未知の期間のデータ)でもリターンが向上しており、かなり頑健な結果です。

システム全体への反映

このsat2の改善をシステム全体に組み込んだところ、全体の指標も底上げされました。 システム全体でのMC(モンテカルロ合格率=日次リターンを再標本化してプロップ合格確率を推定した値)は96.9%から97.5%へ上昇し、失格率は0.9%から0.6%へ低下しました。sat2の改善が、システム全体の安定感を高める結果となっています。 今回の検証で、出口戦略の主要な手法は一通り審査し終えました。結論として、6つのスリーブでは「利益の戻りはテールを取るための必要経費」として現状維持、sat2のみBE1.0Rを採用してブラッシュアップを図るのが最適という判断です。すでに実装済みですので、Core v1.11.0以降で運用可能です。

関連コード(再現用)

この検証は以下のスクリプトで再現できます(リポジトリ参照)。

  • strategies/yosuga_dow.py