
ローテーションは稼がないが守りとしては本物
Tacticalローテーション戦略に「後知恵バイアス」を排除した環境で挑むと、どのような結果になるのか。

図: ドローダウン=資産が最高値からどれだけ下がったか(例: XAUUSD)。この谷の深さがリスクの実感値です。
Tacticalローテーション戦略に「後知恵バイアス」を排除した環境で挑むと、どのような結果になるのか。2010年以前から上場している大型株56銘柄の中から、ランダムに選んだ11銘柄の組み合わせを40パターン作成し、同一ロジック(63日モメンタムやSMA200、レジーム判定などを用いた戦術的資産配分)を適用して検証した。 検証期間は2011年からの15年間と、リーマンショック(GFC)を含む2003年からの拡張期間の2つ。比較対象として、単純に選んだ11銘柄を均等保有(EW買い持ち)した場合と、市場全体(SPY)の成績を並べた。
15年間の検証結果(2011年〜)
| 指標 | 戦略中央値 | EW買い持ち | SPY |
|---|---|---|---|
| 年平均成長率(CAGR) | 18.2% | 17.6% | 14.2% |
| 月利 | 1.41% | 1.36% | 1.12% |
| PF | 2.25 | - | 2.09 |
| 最大ドローダウン(MDD) | -31.6% | -38.3% | -33.7% |
| シャープ比 | 1.02 | 0.93 | - |
| この期間では、40通りの検証のうち32回でSPYを上回ったが、同銘柄を単純に保有し続けた場合(EW買い持ち)との比較では、勝率は23/40とコイン投げと変わらない結果になった。 |
拡張期間(GFC込み)の検証結果
| 指標 | 戦略中央値 | EW買い持ち | SPY |
|---|---|---|---|
| 年平均成長率(CAGR) | 17.5% | 15.5% | 10.9% |
| 月利 | 1.35% | 1.21% | 0.86% |
| PF | 2.14 | - | - |
| 最大ドローダウン(MDD) | -32.3% | -53.1% | -55.2% |
| シャープ比 | 0.95 | 0.79 | - |
| 特に注目したいのは暴落時の挙動だ。リーマンショックのような大きなショックが含まれる期間でも、このロジックはMDDを-32.3%に抑え込んでいる。EW買い持ちが-53.1%まで落ち込む中で、40本すべてのパターンでMDDが改善した。シャープ比(リスクに対するリターンの効率)の改善も37/40と高い再現性を示している。 |
なぜこの結果になったのか
SPYを上回る成績が出たのは、検証対象のプールに「現在まで生き残っている大型株」という生存バイアスが含まれていたためだ。単純にこれらを均等保有するだけで指数を上回ってしまうため、ロジック自体が優秀というよりは、銘柄選定の段階で有利な条件が揃っていたといえる。 一方で、個別株を11銘柄選ぶことで、セクターETF同士の検証で見られたような「相関が高すぎてモメンタムが機能しない」という問題が解消された。銘柄間の分散が効いたことで、選択ロジックが本来の力を発揮した形だ。
結論
この戦略は、リターンを増やすための「アルファ生成器」としては期待できない。同銘柄をただ持っておくのと大差がないからだ。しかし、暴落を浅くする「リスク管理オーバーレイ(防御装置)」としては本物といえる。特に2008年級の暴落でもMDDを半減させる能力は際立っている。 すでに同様の防御機能を備えたロジックを運用している場合、わざわざこの仕組みを組み込む必要はない。ただ、長期的な株式運用において、単純な買い持ちに「レジーム退避」という盾を持たせる手段としては、十分に価値がある手法だ。
この検証のつながり
この検証は、過去の次の検証を踏まえています(前回ダメだった→今回こうした、別ロジックとの比較など)。