『同じリスクで効率2倍』は頑健化すると消えた

リスク管理 · 1 min

「同じリスクで効率を上げる」という理想は、EAを運用する誰もが一度は追い求めるものです。今回は、境界認識リスク制御(相場状況に応じてレバレッジを動的に変化させる手法)が、本当に固定レバレッジよりも効率的なのかを検証しました。

「同じリスクで効率を上げる」という理想は、EAを運用する誰もが一度は追い求めるものです。今回は、境界認識リスク制御(相場状況に応じてレバレッジを動的に変化させる手法)が、本当に固定レバレッジよりも効率的なのかを検証しました。

プロップファームの壁と月利の構造

まず、この戦略自体の質(シャープレシオ約0.34)を前提に、レバレッジを変化させた際のパフォーマンスを整理します。

レバレッジ倍率月利DD(資産の山からの下落率)
1.0倍0.81%-8.4%
1.5倍1.07%-11.4%
3.0倍1.66%-19.3%
5.0倍2.24%-29.4%
プロップファーム(資金提供会社)の評価試験では、多くの場合「DD 10%以内」が合格ラインです。この表を見ると、月利を1%以上にしようとするとDDが10%を超え、失格リスクが高まります。つまり、この戦略において「月利1%」という数字が、安全圏で狙える構造的な上限と言えます。

効率優位は「幻」だったのか

当初、動的なリスク制御を使えば、固定レバレッジよりも効率よく利益を伸ばせるのではないかという仮説がありました。実際にMC(モンテカルロ合格率:過去のデータからプロップ合格確率を推定したもの)で試算すると、破綻率を一定にした場合、固定レバレッジに比べて動的制御は月利が大きく上回るデータが出ました。 しかし、これは「過去のデータの中で、たまたま悪い日が来なかった」という前提に依存した、いわばナイフエッジ(非常に不安定な均衡)の上に成り立つ結果でした。 実際に「最悪の日の損失が1.3倍に悪化した」というストレスを加えて再テストすると、動的制御の優位性はほぼ消滅しました。動的制御は「じわじわと資産が減る」局面には強いものの、プロップで最も恐ろしい「単日でドカンと5%削られる」ような急激な損失に対しては、固定レバレッジと大差なく無力だったのです。

現実的な頑健性と結論

最新の監査により、現実的なレバレッジの上限は「1.08倍」までと判断しました。

  • 動的制御の複雑な仕組みを導入しても、頑健性(予期せぬ相場環境への耐性)を考慮すると、固定レバレッジに対して劇的な上積みは期待できません。
  • 以前は1.15倍程度までいけると考えていましたが、より厳しいストレス環境(ボラティリティ増大と損失拡大の同時発生)を想定すると、1.08倍が限界です。
  • これにより、安全に取れる上乗せ幅は「月利0.616%から0.682%へ」の約11%増程度に落ち着きます。 結論として、境界認識リスク制御による効率化は、頑健性を確保しようとするとほぼ相殺されてしまいます。この「動的か固定か」という議論よりも、むしろ「いかにして一撃の大きな損失(単日テール)を切り捨てるか」というアプローチのほうが、本質的な改善につながるはずです。 今後は、日次損失が一定ラインに達した時点で強制決済を行うような「テール切断」の仕組みを組み込み、その上で安全レバレッジをどこまで引き上げられるか、という検証が必要だと考えています。

この検証のつながり

この検証は、過去の次の検証を踏まえています(前回ダメだった→今回こうした、別ロジックとの比較など)。