
『勝率80%』の手法を測ったら48.5%だった
ネット上で話題になっていた「勝率80%」を謳う手法について、実際にプログラムを組んで検証してみました。この手法は、上位足(H4)の20EMAの傾きに合わせて、下位足(H1)の20EMAを価格が一度割り込み、再度抜けたタイミングでエントリーするというものです。

図: 逆張り(RSI)のシグナル例(EURUSD 日足・実データ)。RSIが売られすぎ圏に入った反発を狙います。
ネット上で話題になっていた「勝率80%」を謳う手法について、実際にプログラムを組んで検証してみました。この手法は、上位足(H4)の20EMAの傾きに合わせて、下位足(H1)の20EMAを価格が一度割り込み、再度抜けたタイミングでエントリーするというものです。いわゆる「押し目買い・戻り売りのリクロス」を機械化したもので、損切り(SL)は直近の高安、利確(TP)は損切り幅と同じ「RR1:1(リスクリワード1:1)」に設定されています。
検証結果:14変種すべてで採用基準未達
今回の検証では、傾き判定や押し目の有無など、ロジックを微調整した14通りのパターンを用意し、2015年から2025年にかけて10銘柄でテストを行いました。結論から言うと、すべてのパターンで合格ラインに届きませんでした。
| 指標 | 実測値 | 備考 |
|---|---|---|
| 勝率 | 中央値 48.5% | 謳い文句の80%には遠く及ばず |
| PF | 0.85〜0.97 | コスト(スプレッド等)を引くと負け越し |
| MC合格率 | 16% | プロップファームの合格基準を満たせず |
| ※PF(プロフィットファクター)=総利益÷総損失。1を超えると黒字。 | ||
| ※MC(モンテカルロ合格率)=日次リターンを再標本化してプロップ合格確率を推定した値。 | ||
| 「勝率80%」という数字は、今回の検証では影も形もありませんでした。RR1:1の条件で運用すると、勝率はコイン投げとほぼ変わらない約48.5%に収束します。これは、この手法のエントリーシグナル自体には、将来の価格を予測する優位性(エッジ)がほとんど存在しないことを意味しています。 |
なぜ「高勝率」に見えるのか
もしTPを極端に狭くすれば、数学的に勝率は操作できます。しかし、TPを縮めれば当然ながら1回あたりの利益も減るため、トータルではコスト負けしてしまいます。 検証を進めていくと、一部の銘柄(EURJPY、GBPJPY、USDJPY)で利益が出ている期間があることに気づきました。しかし、これは手法が優れているわけではありません。「円安トレンド」という大きな波に乗っただけのベータ(相場全体の動き)による利益です。 しかも、その代償としてドローダウン(資産の山からの下落率)が非常に深刻です。例えばEURJPYでは89%、USDJPYに至っては178%ものドローダウンを記録しており、固定ロットで運用すれば、プロップファームの口座などは一瞬で破綻するレベルです。円安局面では増えますが、トレンドが逆転した瞬間に大損を出す「方向ギャンブル」になってしまっています。
結論:頑健な優位性は存在しない
今回の検証で分かったことは、H4とH1の移動平均線を使った押し目順張りには、コストを差し引いた後に利益を残せるような頑健な優位性がないという事実です。 「勝てる期間」を事前に選べれば利益になりますが、それが事前に分からない以上、この手法を実運用で使い続けることは困難です。謳い文句の高勝率や高い収益性は、特定の期間や銘柄を都合よく切り取った結果(チェリーピック)か、単なる誇張である可能性が高いと考えられます。 なお、手法2についても検証を試みましたが、詳細なルールが非公開のため再現できませんでした。もし詳細が判明すれば、同様に検証を行う予定です。
この検証のつながり
この検証は、過去の次の検証を踏まえています(前回ダメだった→今回こうした、別ロジックとの比較など)。