
3つの時間足を揃えて押し目を買っても勝てない
MTF(マルチタイムフレーム:上位足のトレンドに合わせて下位足で仕掛ける手法)のプルバック(押し目・戻り目)狙いのロジックを、5つの銘柄(EURUSD、USDJPY、GBPUSD、AUDUSD、XAUUSD)で検証しました。

図: 逆張り(RSI)のシグナル例(EURUSD 日足・実データ)。RSIが売られすぎ圏に入った反発を狙います。
MTF(マルチタイムフレーム:上位足のトレンドに合わせて下位足で仕掛ける手法)のプルバック(押し目・戻り目)狙いのロジックを、5つの銘柄(EURUSD、USDJPY、GBPUSD、AUDUSD、XAUUSD)で検証しました。 今回のロジックは、日足(D1)と4時間足(H4)の20SMAが減速するタイミングを狙い、1時間足(H1)のクロスに合わせてエントリーするという、トレンドフォローの基本に忠実な設計です。リーク(未来のデータを見ること)を防ぐため、上位足の判定は確定したバーのみを参照する精密なエンジンでテストしました。
検証した18種類のバリエーション
ベースとなるロジックに加え、フィルタの有無(D1減速、H4逆行、H4減速など)や押し目の条件、出口戦略を組み合わせた18パターンを比較しました。
| 指標 | ベース版(全部入り) | 最小構成版(D1方向+H1クロスのみ) |
|---|---|---|
| OOS純益平均 | +10.4% | +11.2% |
| PF(プロフィットファクター)中央値 | 0.52 | 1.09 |
| Sharpe(シャープレシオ)中央値 | -0.32 | +0.18 |
| プラス銘柄数 | 2/6 | 5/6 |
| 検証の結果、18変種のうち17が基準未達でした。驚いたことに、手の込んだフィルタを重ねた「全部入り」のベース版よりも、条件を削った「最小構成版」の方が成績が良いという結果に。複雑なMTF条件を加えることが、トレードの予測力を高めるどころか、逆に足枷になっていたようです。 |
唯一の通過点と「USDJPY」の罠
唯一、基準をクリアしたのが「出口をATR(平均的な値動き)で設定した」ロジックですが、これも手放しで喜べるものではありません。 このロジックの利益の大部分は、USDJPYのみで発生しています。さらに詳しく分析すると、純益の74.8%が2022年から2024年にかけての「円安トレンド」という特定の局面で得られたものでした。これはロジックの優位性というより、単にUSDJPYの強いトレンドに乗っかっていただけの「市場ベータ(市場全体の動き)」に過ぎません。 プロップファームの合格基準として使われるMC(モンテカルロ合格率)も50.2%と振るわず、特定の相場に偏りすぎています。
なぜうまくいかなかったのか
この検証で浮かび上がったのは、以下の3点です。
- フィルタが遅い: SMAの傾きや減速を利用するフィルタは、どうしても反応が遅れてしまいます。コストを差し引いた後に残るような予測力は、残念ながら確認できませんでした。
- トレンド銘柄以外では機能しない: 「日足方向に順張りする」という考え方は、USDJPYのような極端なトレンド銘柄では機能しますが、平均回帰(相場が一定範囲に戻ること)の傾向が強いEURUSDや金(XAUUSD)では優位性(エッジ)が消滅してしまいます。
- エグジットの工夫に過ぎない: 出口をATRに変えると成績が上がるのは、ロジックが優れているのではなく、単に「トレンドに長く乗る」という設定に変わっただけのことです。
今後の展望
今回の検証を通じ、このロジックがFXや貴金属において、持続的な予測可能性を持っていないことが分かりました。過去の研究結果とも重なりますが、単一または合成テクニカル指標だけで頑健な優位性を見つけるのは非常に困難です。 ただし、この検証基盤が使えないわけではありません。同じMTFプルバックの骨格でも、モメンタム(勢い)が持続しやすい暗号資産や個別株であれば、異なる結果が出る可能性があります。あるいは、USDJPYのように「トレンドが強い銘柄」だけを選別するフィルタを導入すれば、別の道が開けるかもしれません。 今のところ、この「MTFプルバック手法」だけで安定して勝ち続けることは難しい、というのが正直な結論です。
この検証のつながり
この検証は、過去の次の検証を踏まえています(前回ダメだった→今回こうした、別ロジックとの比較など)。