弱いシグナル多数の多数決でも方向は当たらない

却下手法 · 1 min

「マイクラのように、個々に考えを持つAIをたくさん並べて意見をまとめれば、チャートの先読みができるのではないか」。そんな仮説を立てて検証してみました。

「マイクラのように、個々に考えを持つAIをたくさん並べて意見をまとめれば、チャートの先読みができるのではないか」。そんな仮説を立てて検証してみました。FXの世界も、数百万人のトレーダーが同じような構造で売買しているわけですから、個々のAIの意見を統計的に合成すれば、市場の動きが見えてくるかもしれないと考えたのです。 機械学習の言葉でいえば、これは「投票アンサンブル」という手法にあたります。数学的な大前提として、アンサンブルは予測の「バラつき(分散)」を抑えることはできますが、元となる優位性(エッジ)自体がない場合、どれだけ束ねても滑らかなゼロが積み重なるだけです。今回は「個々の弱学習器にはない優位性が、合成によって浮かび上がるのではないか」という一縷の望みに賭けてみました。

検証の設計

SMAやRSI、ボリンジャーバンドなどのテクニカル指標をベースに、パラメータを細かく変えた弱学習器を121個用意しました。これら121人の「AI」に毎バーの方向(上がるか下がるか)を投票させ、多数決や性能に応じた加重平均などで合成します。 対象は主要通貨ペアとゴールド、株価指数の計6銘柄です。2015年から2020年までのデータで重みを学習し、2020年から2025年の未知のデータ(OOS=アウト・オブ・サンプル)で通用するかを判定しました。成功の条件は、合成した結果が「個々のAIの中央値」「ベストなAI単体」「単純に持ち続ける(Buy&Hold)」をすべて上回り、かつ純粋な方向ヒット率が51%を超えることとしました。

検証結果: 全銘柄で不採用

結果は非常に残念なもので、すべての銘柄で不採用となりました。

銘柄ヒット率アンサンブルのSharpeBuy&HoldのSharpe
EURUSD0.503-0.04-0.15
USDJPY0.503+0.16+0.91
GBPUSD0.494-0.38-0.21
AUDUSD0.504+0.12-0.08
XAUUSD0.508+0.11+0.91
US5000.547+1.80+4.01
※Sharpe(シャープレシオ)はリスクに対してどれだけ効率よく利益を得られたかを示す指標。
ヒット率はどれも50%付近で、数値を集めても次の一手が当たるわけではないという現実が浮き彫りになりました。特にトレンド相場だったUSDJPYやゴールドでは、ただ持っているだけのBuy&Holdに大敗しています。US500だけは数値が良く見えますが、これは取引回数が少なく、市場全体の上げ幅にも遠く及ばないため、実質的な優位性はありません。

なぜうまくいかなかったのか

結論として、この手法は「優位性がないものを束ねても優位性は生まれない」という事実に直面しました。 個々の指標には、特定の条件下でのみ機能する「部分的な優位性」が存在することは以前の研究でも確認できています。しかし、投票によって意見を合成しようとすると、指標がサインを出すタイミングのズレが災いし、かえって取引コストに負けてしまうのです。ローテーションで入れ替えても、同時に合成しても、元となる「持続的な予測可能性」が相場に存在しない以上、メタ的な操作ではどうにもならないようです。

今後の可能性

とはいえ、すべてが否定されたわけではありません。今回の検証で分かったのは、少なくとも「テクニカル指標の統計合成」には限界があるということです。 一つは、LLM(大規模言語モデル)のような「ニュースや文脈を読めるAI」であれば、数値化された過去データにはない情報源を扱える可能性があります。もう一つは、検証対象をFXや指数ではなく、モメンタムが持続しやすい暗号資産や、特有のアノマリーがある個別株に広げることです。今回の検証基盤はそのまま流用できるため、次に試すなら「燃料のある市場」を探すのが近道のようです。

この検証のつながり

この検証は、過去の次の検証を踏まえています(前回ダメだった→今回こうした、別ロジックとの比較など)。