
『今の相場に合う戦略を選ぶ』は幻想だと確定した
「数十年安定して勝てるロジック」は、どうしても利益が薄くなりがちです。そこで浮かぶのが、「今の相場に合うロジックをその都度選び、破綻する前に利益を出し切る」という適応型(ローテーション)の戦略。これなら固定されたシステムよりも、もっと効率よく稼げるのではないか。
「数十年安定して勝てるロジック」は、どうしても利益が薄くなりがちです。そこで浮かぶのが、「今の相場に合うロジックをその都度選び、破綻する前に利益を出し切る」という適応型(ローテーション)の戦略。これなら固定されたシステムよりも、もっと効率よく稼げるのではないか。今回はこの仮説を、プロップファームの制約などを外した純粋な学術的視点で徹底的に検証してみました。
検証の仕組み
トレンド系(順張りブレイク)と平均回帰系(逆張り)の代表的な戦略を10種用意し、金・通貨・指数など10銘柄に適用した計102個の候補を準備しました。これらを2015年から2026年までの期間でバックテストし、「どのロジックが勝つか」という予測可能性を測定しています。なお、ズル(ルックアヘッド)を防ぐため、常に直近のデータまでを使って翌期の運用を決定する厳密な構成です。
結論:適応型は固定システムを超えられない
結論から言うと、今の相場に合わせてロジックを入れ替える手法は、すべての検証パターンで「固定されたシステムを全保有する」という単純な手法に勝てませんでした。
| 手法 | 週次 | 月次 | 四半期 |
|---|---|---|---|
| 適応選択(直近の勝者を選ぶ) | +0.04 | +0.14 | +0.84 |
| 固定システム(全て保有) | +0.17 | +0.19 | +0.21 |
| ※数値はSharpe(シャープレシオ=リスクに対するリターンの効率性。高いほど優秀) | |||
| 唯一、四半期単位で過去1.5年分を振り返って選ぶ手法だけが固定保有を上回りましたが、その中身を解剖してみると、頻繁に切り替えているわけではなく、結局「ずっと成績の良い特定の戦略」に収束しているだけでした。つまり、賢い適応をしているのではなく、たまたま長期で優秀なシステムを拾い続けていただけだったのです。 |
なぜ「適応」はうまくいかないのか
なぜ「今の相場に合うロジックを選ぶ」ことが失敗するのか、その理由は主に3つあります。
- 直近の勝者は次も勝つとは限らない 統計的に調べたところ、直近で勝ったロジックが次期も勝つという相関はゼロです。むしろ、わずかに負の相関(直近の勝者が次は負ける)すら見られました。
- トレンドを見つけたときには既に遅い 「トレンドが出ているときはトレンド系を使う」という教科書的なルールも試しましたが、これも全敗でした。トレンド指標(ADXなど)は遅行指標です。トレンドが「見えた」ときには、利益が出る局面の多くは既に終わっています。
- 「利益が出る局面」はあまりに希少 強いトレンドが発生して利益が出るのは、週ベースで見てもわずか7%程度です。この希少なチャンスを予測して狙い撃つのは極めて困難です。
学びと今後の道筋
今回の検証で、「ロジックをガチャガチャと入れ替える」という適応型戦略の限界がはっきりしました。JPYペアや金属といった市場は、そもそも平均回帰的な性質が強く、モメンタム(勢い)が持続しにくいという特徴があるため、適応型の燃料となる「持続的なトレンド」そのものが不足しているのです。 では、利益が薄いという問題をどう解決すべきか。 答えは「ロジックの入れ替え」ではなく「リスクの取り方」にあります。過去の検証でも示されている通り、安全を重視しすぎたDD(ドローダウン=資産の山からの下落率)を少しだけ許容し、リスクの倍率を調整する方が、よほど効率的に利益を伸ばせます。 もし適応型戦略を成功させたいなら、JPYや金属ではなく、モメンタムが学術的にも持続することが証明されている「暗号資産」や「個別株」といった別の市場をターゲットにすべきです。今回の検証基盤は流用できるため、次は対象アセットを変えて再挑戦してみる価値はありそうです。
この検証のつながり
この検証は、過去の次の検証を踏まえています(前回ダメだった→今回こうした、別ロジックとの比較など)。