
利確目標は罠?EA最適化で見えた真実
トレンド核 BreakoutLong(現状TP無し=チャネル決済)に固定TP(tp_atr*ATR全決済)を1〜12ATR掃引。robust5 FX/H1/HTF/2015-24。
本記事は「利確目標は罠?EA最適化で見えた真実」の検証を、はじめての方にも分かるようにまとめたものです。

図: ブレイクアウトのエントリー例(XAUUSD 日足・実データ)。直近の高値を上抜けたところで買います。
今回の検証は、私たちが普段使っているEA(自動売買システム)の「利益確定(TP)の仕方」について、もっと良い方法がないかを探ってみたお話です。特に「TPを設定しない」という今のやり方が本当にベストなのか、改めて確認してみたかったんですね。
どんなアイデア?
私たちのEAは、トレンドが出始めたタイミング(ブレイクアウト)でエントリーして、利益をしっかり伸ばす「トレンドフォロー型」という戦略を基本にしています。これまでのEAは、特定の利益確定目標(TP)を決めずに、相場の状況(例えば、チャネルラインを割ったら決済する、など)を見て決済する仕組みでした。 でも、「もっと早く利益を確定した方が、勝率が上がるんじゃないか?」とか「ドローダウン(一時的な資産の減少)を抑えられるんじゃないか?」という疑問も頭をよぎることもありますよね。そこで今回は、エントリーしたらすぐに固定のTP(利確目標)を設定する、というやり方を試してみることにしました。
どうやって試した?
具体的には、私たちのEAの基本ロジックである「BreakoutLong(ブレイクアウトで買いエントリーする)」の部分はそのままに、決済方法だけを色々変えてみました。 変更したのは、TP(利確目標)の幅です。相場の平均的な値動きの幅を示す**ATR(Average True Range)**という指標を使って、その1倍から12倍まで、段階的にTPを設定して試しました。例えば「1ATR」なら、平均的な1日分の値動きと同じくらいの利益が出たら決済、というイメージですね。そして、今のEAと同じ「TPを設定しない」パターンも比較対象として含めました。 検証期間は2015年から2024年までの約10年間、FXの1時間足データを使って、様々な市場環境で安定して機能するか(robustness)をチェックしました。
結果はどうだった?
結果は、私たちにとって非常に興味深いものでした。結論から言うと、TPを固定しない、今のEAのやり方が、ほとんどの指標で一番優れているということが分かったんです。 数字を見てみましょう。TPを小さくする(早く利食いする)ほど、たしかに勝率は上がりました。
- 例えば、TPを1ATRに設定した場合、勝率はなんと75.5%!これはすごい数字ですよね。
- 一方、TPを設定しない今のやり方だと、勝率は**36.8%**でした。 でも、ここが落とし穴だったんです。勝率が上がる一方で、他の重要な指標はどんどん悪化していきました。
- PF(プロフィットファクター = 総利益 ÷ 総損失)は、TPを1ATRにした場合0.94まで下がってしまいました。PFは1を超えないと、全体では赤字になる「負け戦略」を意味します。TPを設定しない今のやり方では1.31と、しっかり利益を出せています。
- **総リターン(総利益)も、TPを1ATRにすると-26%とマイナスに。TPを設定しない場合は+122%**と、大きくプラスでした。
- ドローダウン(DD = 資産が一時的に減った最大幅)も悪化しました。TPを1ATRにすると-41.5%と、かなり大きな落ち込みに。TPを設定しない場合は-21.4%と、半分近くに抑えられています。 そして、TPを小さくすると、トレード回数が激増しました。TPを1ATRにすると4791回ものトレードがあったのに対し、TPを設定しない場合は1166回でした。 この結果から見ると、TPの幅を1ATRから12ATRまで色々試しましたが、途中に「ここが最適!」というポイントはなく、TPを設定しない今のやり方が、勝率以外のすべての指標で最良だったんです。
ここから学んだこと
今回の検証で最もはっきりと分かったのは、「高勝率の罠」でした。 勝率75.5%と聞くと、「すごいEAだ!」と思ってしまいますよね。でも、蓋を開けてみればPFは0.94で「負け戦略」、ドローダウンも-41.5%と非常に大きい。これは、まさに「高勝率=良い」という思い込みが、いかに危険かを示しています。 私たちのEAのような「トレンドフォロー型」の戦略は、普段は小さな勝ち負けを繰り返しながら、たまにやってくる大きなトレンドにしっかり乗って、ドカンと利益を伸ばすことで稼ぐタイプなんです。例えるなら、大物を狙う漁師のようなものですね。小さな魚をたくさん釣るより、年に数回の大物で稼ぐ、というイメージです。 もしTPを狭く設定してしまうと、せっかく大きなトレンドに乗っても、すぐに利益を確定してしまいます。これでは、EAの「稼ぎ頭」であるはずの**「たまの大勝ち(fat tail)」を潰してしまい、EA本来の強み(優位性(エッジ))を失ってしまうことになります。 さらに、TPを狭くするとトレード回数が激増するため、その分、手数料などのコスト**がかさんでしまいます。また、ちょっとした値動き(ダマシ)で決済されてしまうことも増え、結果的にドローダウンが悪化してしまう要因にもなっていました。 今回の検証は、過去に行った他の研究(メタラベル、出口戦略、スケールアウトに関する研究)とも完全に一致する結果となりました。やはり、今のEAが採用している「TPを設定せず、利益をしっかり伸ばす」という戦略が、私たちのEAにとって最も正しいということが、シンプルながらも非常に強力な形で実証されたわけです。 今回の結果を受けて、現在のEAのシステムを変更する必要はないと判断しました。今の設定が正しいことを再確認できた、という意味で、非常に有意義な検証だったと感じています。