ドローダウン削減の秘策!?「無相関EA」の夢は叶うか

却下手法 · 1 min

仮説: システムDD=スリーブ間相関DD。核を「ペアの強さ」でなく「ペア間相関の低さ」で組めばDD↓→再レバ増益。全19FX+金でトレンドロング(BreakoutLong+HTF)のエッジ+戦略日次相関を計算。

本記事は「ドローダウン削減の秘策!?「無相関EA」の夢は叶うか」の検証を、はじめての方にも分かるようにまとめたものです。

図: ブレイクアウトのエントリー例(XAUUSD 日足・実データ)。直近の高値を上抜けたところで買います。

図: ブレイクアウトのエントリー例(XAUUSD 日足・実データ)。直近の高値を上抜けたところで買います。

今回は、EAのパフォーマンスをさらに安定させるための新しいアイデアを検証してみました。具体的には、「複数のEA(スリーブ)を組み合わせるとき、それぞれのEAがバラバラの動きをするようにすれば、全体の成績の落ち込み(システムドローダウン)を抑えられるんじゃないか?」という仮説を立ててみたんです。

どんなアイデアを試してみたの?

私たちのEAは、複数の通貨ペアや戦略(これを「スリーブ」と呼んでいます)を組み合わせて運用しています。全体の成績が一時的に落ち込むこと(ドローダウン)は、FXトレードにつきものですよね。登山でいうと、「どれだけ下りに転じたか」のようなものです。 このドローダウンを減らすにはどうすればいいか?これまで、私たちは「個々のスリーブの成績が良いものを選ぶ」という視点でポートフォリオを組んできました。でも、今回はちょっと違うアプローチです。 「もし、個々のスリーブがお互いに似た動きをせず、バラバラに動いてくれたら、全体のドローダウンをさらに抑えられるはず!」 そう考えました。つまり、「良い成績を出すペアを選ぶ」だけでなく、「お互いに影響し合わない(相関が低い)ペアを選ぶ」ことで、全体のドローダウンを減らし、結果的に安全に運用できる資金量(レバレッジ)を増やして利益を伸ばせるんじゃないか、という仮説を立てたんです。

どうやって検証したの?

この仮説を検証するために、まずは以下のステップで進めてみました。

  1. 対象の選定: FXの主要な19通貨ペアと、金(XAUUSD)を対象にしました。
  2. 戦略の統一: すべての対象で、私たちが得意とする「トレンドフォロー型のロング戦略」(BreakoutLong+HTF)を適用し、過去のデータでバックテストを行いました。
  3. 優位性(エッジ)(優位性)と相関の計算:
  • それぞれの通貨ペアが、このトレンド戦略でどれだけ利益を出しやすいか(「優位性」と呼びます)を、PF(プロフィットファクター=総利益÷総損失。1を超えると黒字)という指標で測りました。
  • さらに、それぞれの通貨ペアが日々の値動きでどれだけ似た動きをするか(「相関」と呼びます)を計算しました。 こうして、「トレンドに乗って利益が出やすい通貨ペアはどれか?」「それらの通貨ペアは、お互いにどれくらい似た動きをするのか?」というデータが揃ったわけです。

衝撃の発見!トレンドに乗れる通貨ペアって?

検証を進めていく中で、私たちはある「決定的で衝撃的な事実」に気づいてしまいました! なんと、私たちが試したトレンドフォロー戦略で利益が出やすい(PFが1を超える)通貨ペアは、19通貨ペア中たったの8つだけだったんです。 しかも、その8つのうち**7つが「円クロス」(米ドル/円、ユーロ/円など、円が絡む通貨ペア)で、残りの1つが「金」**でした。具体的には以下の通りです。

  • USDJPY (PF 1.56)
  • XAUUSD (PF 1.34)
  • GBPJPY (PF 1.25)
  • EURJPY (PF 1.21)
  • AUDJPY (PF 1.19)
  • CHFJPY (PF 1.15)
  • NZDJPY (PF 1.08)
  • CADJPY (PF 1.01) 一方、ユーロドル(EURUSD)やポンドドル(GBPUSD)といった、いわゆる「非円」の通貨ペアでは、この戦略ではほとんど利益を出すことができませんでした。

「トレンドする通貨」=「相関の塊」だった!

この結果が意味することは、「トレンドに乗って利益を出しやすい通貨ペア」というのは、実は**「円が絡むペア」と「金」に集中している**ということ。 そして、ここが一番重要なんですが、これらの円クロスと金は、お互いに非常に似た動きをする(相関が高い)グループなんです! つまり、「トレンドフォロー戦略で利益を出しやすい通貨ペア」は、残念ながら「バラバラに動いてくれる(相関が低い)もの」ではなかったんです。「無相関のトレンドペアは存在しない」という、厳しい現実を突きつけられました。

相関を下げたらどうなった?残念な結果…

それでも、私たちは諦めずに「相関が低いペアを組み合わせてみたらどうなるか?」を試してみました。 具体的には、これまでのポートフォリオの内部相関が0.21だったところを、相関が低くなるようにペアを入れ替えて、内部相関を0.16までわずかに下げることができました。 「これで全体のドローダウンが減るはず!」と期待したのですが、結果は残念なものに…。

  • ドローダウンが悪化! なんと、全体のドローダウンは-21.7%から**-24.8%に増えてしまいました。**
  • 効率も悪化! 運用効率を示すr/DD(リターン・オン・ドローダウン。リスクに対してどれだけリターンが得られたかを示す指標で、数値が高いほど効率が良い)も、8.85から7.63に低下してしまったんです。 これはどういうことかというと、相関を下げるために、成績自体はあまり良くない(ドローダウンが大きい)通貨ペアに替えた結果、わずかに相関が下がったことよりも、個々のペアの成績の悪化が全体の足を引っ張ってしまった、ということなんです。 結局、これまで私たちが「優位性(優位性)のある通貨ペア」を選んで組んでいたポートフォリオ(「robust5」と呼んでいます)が、相関の面でも既に最適に近い、妥当な0.21という数値だったことが分かりました。

今回の検証からわかった、EA運用の「真実」

今回の検証で、私たちはFXのトレンドEA運用に関する非常に重要な「構造的な結論」にたどり着きました。 それは、**「FXのトレンドで利益を出しやすい優位性は、『円クロス』と『金』という、お互いに相関の高いグループにしか存在しない」ということです。 この事実がある以上、FX通貨ペアだけでポートフォリオを組む限りは、「FX内での分散投資だけでは、全体のドローダウンを大きく減らすことは難しい」**という現実が浮き彫りになりました。なぜなら、「バラバラに動いてくれるトレンド通貨ペア」が存在しないからです。

ドローダウン低減の道は?

では、システムのドローダウンをさらに減らすにはどうすればいいのでしょうか? 真に効果的な「分散投資」の材料は、**「FXとは全く違う動きをする、別の資産クラス」**にあるということが分かりました。 実は、私たちは既にこの考え方を取り入れていて、現在のEA(v1.1.0以降)では、FXの核となる部分に加えて、FXとは相関が低い「株価指数」(FX核との相関は0.16程度)を組み合わせることで、分散効果を高めています。 今後、システムのドローダウンをさらに低減していく残された道は、この「FX/金以外の、もっと相関の低いスリーブ」を探すことになります。株価指数は既に投入済みですし、あとは仮想通貨(暗号資産)なども考えられますが、まだデータが不足しているのが現状です。 今回の検証で、「相関の低いFXペアだけで核を組み替える」というアイデアはうまくいかないことが分かりました。しかし、この「できないこと」が明確になったことで、今後のEA開発の方向性(フロンティア)が、また一つハッキリと見えてきましたね。