なぜ負ける?EA「負けトレード」1166回分の共通点

却下手法 · 1 min

トレンド核(robust5 FX/H1/HTF)の全1166トレードにエントリー時特徴(atr%/adx/rsi/過伸びext/時間/曜日/riskon/保有bars/年)を付与し勝率/期待値を分析。

本記事は「なぜ負ける?EA「負けトレード」1166回分の共通点」の検証を、はじめての方にも分かるようにまとめたものです。

図: ブレイクアウトのエントリー例(XAUUSD 日足・実データ)。直近の高値を上抜けたところで買います。

図: ブレイクアウトのエントリー例(XAUUSD 日足・実データ)。直近の高値を上抜けたところで買います。

今回は、私たちが開発しているEA「トレンド核(robust5 FX)」が、どんな時に負けてしまうのか?その共通点を探ってみました。負けトレードのパターンを特定できれば、それを避けてEAの成績をもっと良くできるんじゃないか、という期待を込めて分析したんです。

どんなアイデア?

私たちのEA「トレンド核」は、主に1時間足チャート(H1/HTF)を使ってトレードする、トレンドフォロー型のEAです。今回は、このEAが行った全1166回もの実際のトレードデータを徹底的に分析しました。 具体的には、それぞれのトレードがエントリー(新規注文)した時の様々な情報に注目しました。例えば、相場の勢いを示すRSI(アールエスアイ=相場の買われすぎ・売られすぎを示す指標)やADX、値動きの大きさを示すATR%、価格がどれくらい伸び切っているか、エントリーした時間帯や曜日、リスクの取り方(riskon)、そしてポジションをどれくらいの期間持っていたか(保有bars)など、たくさんの要素を洗い出したんです。 そして、これらの要素が、トレードの「勝率」や「期待値」(1回あたりの平均損益)にどう影響しているのかを詳しく調べてみました。

結果はどうだった?「負け」に共通していた2つのこと

分析の結果、負けトレードには大きく2つの共通点が見つかりました。

1. ポジションの保有期間が短いトレードは負けやすい

まず一つ目は、「ポジションを保有している期間が短い」トレードが負けやすい、という傾向です。 例えば、エントリーから12本以下のローソク足(つまり12時間以内)で決済されたトレードは、勝率が0.4%とほとんど負けていて、1回あたりの平均損益もマイナス0.445%と大きく損失を出していました。 一方で、83本以上のローソク足(83時間以上)と長く保有したトレードは、なんと90.6%もの高い勝率を誇り、平均損益もプラス1.04%とかなりの好成績だったんです。 これは、トレンドフォロー型のEAの特性とも言えます。トレンドに乗って利益を伸ばすには、ある程度の期間ポジションを持ち続ける必要があるんですね。ただ、これは「結果的に保有期間が短かったから負けた」という話で、エントリーする時点で「これは短期間で終わるトレードだな」と見分けるのは、残念ながら非常に難しいんです。

2. エントリー時のRSIが低い(勢いの弱いブレイク)時に負けやすい

そして、もう一つ、そして唯一、エントリーする前に判断できる負けやすいパターンが見つかりました。それが「エントリー時のRSIが低い」という状況です。 RSIは相場の勢いを示す指標ですが、このRSIが30〜60くらいの低い状態でEAがエントリーしたトレードは、勝率が24.4%と低く、期待値もマイナス0.068%でした。これは「モメンタム弱ブレイク」、つまり勢いの弱いブレイクに乗ってしまった時に負けやすい、ということを示しています。 逆に、RSIが72以上と高めの、勢いのある状態でエントリーしたトレードは、勝率が45.5%と高く、期待値もプラス0.142%と好成績でした。 他の要素(ATR%やADX、伸び具合、時間帯、曜日など)では、これといった負けやすいパターンは見つかりませんでした。つまり、「エントリー時のRSIが低い」というのが、私たちが事前に手を打てる可能性がある唯一の負けパターンだった、ということなんです。

フィルターを試してみたけど…

「よし、それならRSIが低い時にはエントリーしないようにすれば、EAの成績が上がるんじゃないか?」 そう思って、「RSIが低い時にエントリーしない」というフィルター(条件)をEAに加えて、バックテスト(過去のデータで検証すること)を行ってみました。 結果はどうだったでしょうか? 検証期間(IS=インサンプル。EA開発に使った期間)では、特にEAが苦手とする相場(弱期)でPF(プロフィットファクター=総利益÷総損失。1を超えると黒字。1を超えると黒字)が0.98から1.02にちょっとだけ改善しました。これは「最悪期でも少しは生き残りやすくなるかも?」という、わずかな希望が見えた瞬間でした。 しかし、未知の相場(OOS=アウトオブサンプル。EA開発に使っていない期間で、未来の相場に近い検証結果)でのPFは1.48から1.47〜1.48と、ほとんど変化がありませんでした。 さらに、他の検証期間でもほとんど差がなく、しかもこのフィルターを追加することでトレード回数は9%も減ってしまったんです。 つまり、負けやすいトレードを避けるためのフィルターを入れても、EA全体の成績は結局良くならなかった、という残念な結論になりました。

なぜ改善しなかったの?トレンドフォローの宿命

なぜ、負けやすいパターンがわかったのに、それを避けても成績が上がらなかったのでしょうか?これには、トレンドフォロー型EAならではの構造的な理由があるんです。 RSIが低い時のエントリーは確かに負けやすいのですが、実はその時の負け幅はそこまで大きくないんです。そして、ごく稀にですが、その中に大きな勝ちトレードが紛れ込んでいることもあるんですね。このフィルターで負けを避けようとすると、そうした「隠れた勝ちトレード」まで捨ててしまうことになるんです。 登山に例えるなら、「ちょっとした平坦な道や緩やかな下り坂で足を滑らせることはあるけど、大怪我にはならない。でも、その道を避けると、その先にあった絶景ポイント(=大勝ち)まで辿り着けなくなってしまう」ようなイメージです。 トレンドフォロー型EAの利益って、実は「たまにやってくる大勝ち(ファットテール現象)」で大きく伸びるものなんです。小さな負けをいくら減らしても、この「大勝ち」を逃してしまうと、全体の成績は結局良くならない、ということなんですね。 つまり、「負けやすいパターンはわかるけど、それを避けてもEAのパフォーマンスが上がるわけじゃない」というのが、トレンドフォローEAの宿命とも言えるんです。

今回の検証から学んだこと

今回の検証で、「エントリー時のRSIが低い時(勢いの弱いブレイク)」が負けやすい共通点だとわかりました。 しかし、この条件でトレードを避けるフィルターを導入しても、EA全体の成績はほとんど改善しない、という結果になりました。唯一、EAが苦手とする相場(弱レジーム)での検証期間(IS)では、PFがわずかに改善(0.98→1.02)しました。これは、EAが特に厳しい状況に陥った時に、少しだけ生き残りやすくなる「保険」のような意味合いがあるかもしれません。そのため、この「RSIが低い時のエントリーを避ける」機能は、保守的なオプションとしてEAに組み込んだままにしています。 今回の分析結果を受けて、EA「トレンド核」のバージョン1.4.1に変更はありません。 今回のデータに基づいた詳細な分析でも、私たちのEA「トレンド核」がすでにかなり頑丈(ロバスト=様々な状況に耐えうる安定性がある)で、これ以上成績を劇的に改善させる「おいしい部分」はほとんど残されていない、ということが再確認できました。 これからも、皆さんに安心して使っていただけるEAを目指して、地道な研究を続けていきますね!