
暴落予知の夢!「方向つきリスクオフ信号」を追え
相関の"大きさ"が無益(研究117)→"方向つき"下落先行信号なら DD↓ できるか。現フィルタ=US500<SMA200より良い信号を探索。価格内候補: 速いSMA(100/50)・モメンタム(<0)・指数ボラスパイク(VIX代替)・複数指数ブレッド。
本記事は「暴落予知の夢!「方向つきリスクオフ信号」を追え」の検証を、はじめての方にも分かるようにまとめたものです。
今回の検証テーマは「方向つき下落先行リスクオフ信号の探索」です。簡単に言うと、「これから相場が下がりそうだな」というサインを、これまでのEA(自動売買)システムよりも早く、しかも的確にキャッチできる方法はないかな?という研究ですね。 前回の研究(研究117)では、相関の「大きさ」だけではドローダウン(DD = 資産が一時的にどれだけ減ったか、登山でいうと"頂上からどれだけ下りに転じたか"のようなもの)を減らす効果が薄いことがわかりました。そこで今回は、「下落を先に察知する"方向つき"の信号」に焦点を当てて、DDを減らせるかを探ってみました。 現在使っているリスクオフのフィルターは「US500(アメリカの主要株価指数)がSMA200(200日単純移動平均線)を下回ったら」というもの。これよりも、もっと良い信号はないか?と、いくつかの候補をチェックしてみましたよ。
どんなアイデア?
今回、特に注目したのは、価格の動きから何かヒントが得られないか、ということでした。具体的には、次の4つのアイデアを検証しました。
- 速いSMA(単純移動平均線): SMAは、過去の一定期間の平均価格を示す線です。期間が短いほど、価格の動きに敏感に反応します。例えば、SMA200は200日間の平均ですが、SMA100やSMA50といった「速いSMA」を使えば、もっと早く相場の変化を察知できるのでは?と考えました。これは、まるでセンサーの感度を上げるようなイメージですね。
- モメンタム(勢い): 価格の「勢い」が弱くなったり、下向きになったりするサインを捉えられないか?という視点です。
- 指数ボラスパイク(VIX代替): VIX指数(恐怖指数)のように、市場の変動性が急激に高まる「スパイク」を、他の指数で代用して捉えられないか?というアイデアです。市場の不安が高まると、価格は大きく動きやすくなりますからね。
- 複数指数ブレッド: 複数の株価指数の動きを総合的に見て、市場全体の「広がり」や「方向性」からリスクを判断できないか?という考えです。
どうやって試した?
これらのアイデアを、私たちのEAシステムに組み込んで、過去のデータでどれだけ効果があるか「バックテスト」で検証しました。検証は、まず特定の通貨ペア(私たちはこれを「FX核」と呼んでいます)単体で試した後、複数の通貨ペアを組み合わせた「フルシステム」全体でどうなるか、という2段階で行いました。
結果はどうだった?
さて、ここからが本題です。どんな結果が出たのでしょうか?報告しますね!
FX核単体では「速いSMA」が効果あり!
まず、特定の通貨ペア(FX核)単体で見てみたところ、「速いSMAトリガー」がかなり有効だということが判明しました! これまでの基準であるSMA200から、期間を短くしてSMA100、さらにSMA50と速くしていくごとに、DD(ドローダウン)が着実に改善していったんです。
- SMA200の場合: DD -7.4%
- SMA100の場合: DD -6.9%
- SMA50の場合: DD -6.5% さらに、r/DD(リターン・トゥ・ドローダウン比率 = 利益をどれだけ効率的に得られたかを示す指標)も、SMA200の0.24からSMA50では0.27へと、単調に改善していきました。これは、「危機をより早く捉えて、損失を小さくできた」という明確な証拠ですね。たまたまではなく、本当に効果のある方向性を見つけた!と、この時点ではかなり期待が高まりました。 残念ながら、モメンタムや指数ボラスパイク、複数指数ブレッドといった他の候補は、今回の基準では期待以下の結果に終わってしまいました。 また、サブ期間(特定の期間)で見てみると、2015-18年や2024-26年といった「危機期」と呼ばれる相場が荒れやすい時期には改善が見られましたが、2021-24年のような「強いトレンド期」では、早くリスク回避しすぎてしまうため、本来得られたはずの利益を取り逃がしてしまう(「刈り取り」と表現します)というデメリットも確認されました。
しかし、フルシステムではまさかの結果に…
FX核単体での良い結果に、私たちも「これは!」と思ったのですが、EAシステム全体(フルシステムv1.4.1)に組み込んでみたところ、速いSMAはシステム全体のDDを下げることができませんでした。
- SMA50を導入した場合のDDは9.7%で、これまでの基準(SMA200)の9.6%とほとんど変わりませんでした。
- さらに、SMA100にすると、DDはなんと10.3%に悪化してしまったんです! これは、「個々の部品は良くなっても、全体としてうまく噛み合わないと、車の性能は上がらない」という状況に似ていますね。過去の研究(研究51や86)でも、「核の改善 ≠ システムの改善」という現象は何度か経験してきましたが、今回も同じ壁にぶつかってしまいました。 なぜこうなってしまうのか?結論から言うと、システム全体のDDは、複数の通貨ペア(スリーブ)が同時に下落する「相関ドローダウン」によって決まってしまうからなんです。つまり、個々の通貨ペアのリスク回避タイミングをどんなに速くしても、複数の通貨ペアが同時に下がるリスクという「システム全体の壁」は乗り越えられず、結果的にDDは大きく改善しない、というわけです。MC(最大連続損失 = 一番大きな連続した損失)もわずかに低下はしましたが、期待したほどの効果はありませんでした。
唯一の収穫:日中の損失を抑える「安全弁」としての可能性
完全に無駄だったかというと、そうではありません!唯一の収穫として、SMA50は「M1最悪」(月間最大損失)を2.42%から1.69%へと改善する効果があることがわかりました。これは、速い危機回避によって「日中の急な吐き出し(損失)」を抑制できる、ということなんです。 この特性は、「攻めCore/高レバ(高いレバレッジ)で運用する際のM1安全弁」として、つまり「いざという時に、日中の大きな損失を防ぐためのセーフティネット」として使える可能性がある、という発見でした。これは、以前研究したスケールアウト(ポジションを分割して少しずつ決済すること)と同じような位置づけで、リスク管理のツールとして活用できるかもしれません。 とはいえ、今回の目的である「システム全体のDD削減」には至らなかったため、現在のEAシステムv1.4.1はSMA200で据え置きとすることにしました。
ここから学んだこと
今回の研究118、そして一連の研究116〜118を通じて、私たちは非常に重要な教訓を得ました。 それは、**「システム全体のDD(ドローダウン)は、複数の通貨ペア(スリーブ)間の『相関ドローダウン』によって決まる」**ということです。そして、個々の通貨ペア(単一スリーブ)のリスクオフ調整(例えば、今回試した速いSMAや、前回の研究で試した相関の大きさ、あるいはスケールアウトなど)だけでは、このシステム全体のDDという「真の制約」を下げることができない、という現実です。 システム全体のDDを本当に下げるには、「互いに影響し合わない(真に無相関)で、しかも利益を生む(正EV = 期待値がプラス)通貨ペアや取引手法」が必要なんです。しかし、残念ながら、既存のFX価格データの中から、そういった理想的な「無相関で正EVのスリーブ」を見つけるのは非常に難しい、ということも再確認しました。 この壁を乗り越えるには、もしかしたら「新しい種類のデータ」や「FX以外の別の金融資産(アセット)」に目を向ける必要があるのかもしれません。 今回の検証を通じて、現在のEAシステムv1.4.1が、現状の制約の中で「DDフロンティア上にある」、つまり「今の技術と材料で作れる最高の性能の壁」に到達している、ということを改めて確認することができました。 これからも、皆さんのEA運用がより良いものになるよう、検証と研究を続けていきますね!
この検証のつながり
この検証は、過去の次の検証を踏まえています(前回ダメだった→今回こうした、別ロジックとの比較など)。