利益14%増の秘策!?「集約vol-target」が再び見送り

却下手法 · 1 min

動機: 研究88で集約vol-target(全スリーブを合算equityのボラで動かす)は分散版より+14%だったが「マスター調整役=単一障害点/運用複雑」でユーザー不採用。★その後デプロイ方式が**単一MT5 EA(1口座)**に確定=EAは口座equityを既に保持=集約は**追加コストほぼ無料

本記事は「利益14%増の秘策!?「集約vol-target」が再び見送り」の検証を、はじめての方にも分かるようにまとめたものです。

FX自動売買(EA)の検証ブログへようこそ! 今回は、以前から気になっていた「集約vol-target」というアイデアを、最新のEAバージョンv1.4.0で改めて検証してみました。結論から言うと「見送り」なのですが、その理由を初心者の方にもわかりやすく解説していきますね。

どんなアイデア?

まず、「集約vol-target」って何?という話から。 これは、私たちのEAが持っている複数の取引戦略(これを「スリーブ」と呼んでいます)全体を、口座全体の資金(「合算equity」)の動きに合わせて、取引量を調整しようというアイデアなんです。 以前の「研究88」でこのアイデアを試したところ、各スリーブが個別に取引量を調整する「分散版」に比べて、なんと約14%も成績が良かったことがありました。これはすごいですよね! でも、その時は採用を見送ったんです。なぜかというと、全体を調整する「マスター調整役」が必要になるため、運用が複雑になったり、もしその調整役がうまく機能しなくなると全体が止まってしまうリスク(「単一障害点」といいます)があったからです。 ところが!その後のEAの仕組みの進化で、私たちは「単一のMT5 EA(自動売買プログラム)」で複数の戦略を運用する形になりました。これだと、EAはすでに口座全体の資金状況を把握しているので、集約vol-targetを導入するための追加コストがほとんどかからないことになったんです。 「あれ?これなら、もしかして、タダで成績アップできるんじゃない!?」 そんな期待が再燃し、最新バージョンv1.4.0(「株式フィルタ」や「vt_cap3.0」といった新しい機能が搭載されています)を使って、もう一度このアイデアを検証してみることにしました。もちろん、未来のデータは使わない「後知恵なし」で、過去のデータだけで評価しています。

どうやって試した?

今回は、v1.4.0に組み込まれている「株式フィルタ」やボラティリティ(価格変動の激しさ)の計算方法を改善した「vt_cap3.0」という機能を活かしつつ、集約vol-targetの仕組みを組み込んでみました。 「2パス反復」という、計算を何回か繰り返して最適な値を探す方法で、過去のデータを使ってバックテスト(過去の相場でEAがどう動いたかをシミュレーションすること)を行いました。

結果はどうだった?

さあ、肝心の結果です。まずは全体像から見てみましょう。

一見すると良さそうに見えたけれど…

全期間でのバックテスト結果を見ると、

  • 今の「分散版」(現行のv1.4.0)は、ドローダウン(資産が一時的に減る最大の幅。登山で言う「どれだけ下りに転じたか」のようなものです)10%あたりの月利が**+1.59%**。
  • それに対して、「集約版」は**+1.68%。 数字だけ見ると、集約版の方が約6%も利益率が高い**! 「おお!やっぱり集約版は優秀じゃないか!」と、一瞬は喜んだんです。 さらに、集約版は「M1最悪1.43%/0日」(最大ドローダウン時の月利が1.43%で、回復にかかった日数が0日、つまりすぐに回復したという意味です)という、かなり安定感のある数字も出ていましたし、「MC94%維持」(モンテカルロシミュレーションという、乱数を使って未来を予測するテストで、94%の確率で目標を達成できるという意味です)という結果も出ていました。 でも、ちょっと待ってください。以前の検証では「+14%」も成績が良かったのに、今回は「+6%」に留まっています。なぜこんなに差が出たのでしょうか? その理由は、v1.4.0に搭載された**「株式フィルタ」が非常に優秀だった**ことにありました。この株式フィルタは、株式市場の動きを見て、FX市場全体の「リスクが高まっているタイミング」をいち早く察知し、自動的にリスクを抑える働きがあるんです。 つまり、集約vol-targetがやろうとしていた「全体のリスクを管理して、取引量を調整する」という役割を、すでに株式フィルタが果たしてくれていたため、集約vol-targetによる上乗せ効果がほとんどなくなってしまっていた、ということなんですね。

でも、よく見たら問題点が…

さらに詳しく検証を進めていくと、集約vol-targetには2つの大きな問題があることが分かりました。私たちはこれを「2つのゲートで脱落」と呼んでいます。

  1. 計算が安定しない(収束しない) 集約vol-targetは、全体の資金状況に合わせてレバレッジ(てこの原理で少ない資金で大きな取引ができる仕組み)を調整します。ところが、そのレバレッジがまた資金に影響を与え、その資金がまたレバレッジに影響を与える…という、「レバレッジの自己参照」というループが起きてしまうんです。 まるで「卵が先か、鶏が先か」のような状態ですね。このため、計算を繰り返しても利益率が「L1+1.61% → L2+1.68% → L3+1.50%」と上がったり下がったりして、安定した結果が出ませんでした。どの段階の数字を信じればいいのか分からない、非常に不安定な状態だったんです。 一方、分散版は各スリーブが自分のボラティリティだけを見ているので、この問題は起きません。
  2. 相場によって得意不得意がある(サブ期間でレジーム分裂) 全体で見ると集約版が少し良かったのですが、相場の状況(「レジーム」と呼びます)をいくつかの期間に分けて見てみると、意外な事実が判明しました。
  • 弱期(2015年〜2020年): 相場が停滞していた時期です。この時期は集約版が少しだけ良かった(+0.71% vs +0.61%)。
  • 強期(2021年〜2026年): 相場が活発で、最近の傾向に近い時期です。なんと、この時期は分散版の方が成績が良かった(+2.45% vs +2.55%)んです! つまり、全期間で集約版が少しプラスに見えたのは、昔の停滞相場での成績が良かったからで、最近の活発な相場では、むしろ分散版の方が優秀だったということになります。これは、私たちがこれからEAを運用していく上で、非常に重要なポイントですよね。

ここから学んだこと

今回の再検証で、私たちは以下の結論に至りました。

  • 今の「分散vol-target」(現行のv1.4.0)が、最も安定していて信頼できる、頑健なシステムである。
  • 以前の「単一EAで無料で+14%」という集約版への期待は、v1.4.0の「株式フィルタ」がすでに同等のリスク管理を行ってくれていたため、実体が消えていました(集約版の機能が株式フィルタと「冗長」、つまり二重になっていた、ということですね)。
  • 以前の研究88で集約版の採用を見送った判断は、運用が複雑になるという理由だけでなく、今回の検証で明らかになった**「計算の不安定さ」や「相場への適応力の問題」といった頑健性の面でも正しかった**、ということが裏付けられました。 一見すると「+6%」という魅力的な数字が出ていましたが、このようにいくつかの段階(「多段ゲート」と呼んでいます)で厳しく検証することで、その数字が「偽陽性」(本当は違うのに、一見すると良い結果に見えること)だったと正しく判断できました。私たちの検証規律が機能した、ということですね! というわけで、今回の検証結果を受けて、現在のEAシステムに変更はありません。これからも、安定して利益を出せるEAを目指して、検証を続けていきますので、楽しみにしていてくださいね!

この検証のつながり

この検証は、過去の次の検証を踏まえています(前回ダメだった→今回こうした、別ロジックとの比較など)。