
EA強化の限界か?コアシステム「地域分散」で利益天井の衝撃
v1.2.0の最大未活用レバー=指数スリーブが米3(US500/US100/US30, 相互相関0.76と高い)だけ → 地域分散(世界6=+DE40/JP225/UK100)と予算再配分で月利を押せるか。各スリーブを分解しcombine_results(真の共有口座)で審査。分解はv1.2.0を完
本記事は「EA強化の限界か?コアシステム「地域分散」で利益天井の衝撃」の検証を、はじめての方にも分かるようにまとめたものです。

図: Connors RSI2 のエントリー例(USDJPY 日足・実データ)。200日SMAより上で RSI(2) が10以下に沈んだ押し目を買います。
今回の検証は、私たちのEA「v1.2.0」の「指数スリーブ」と呼ばれる部分を、さらに強くできないか?という挑戦でした。 現在のv1.2.0の指数スリーブは、アメリカの主要な3つの指数(US500、US100、US30)に絞って運用しているんです。ここを、ドイツ(DE40)、日本(JP225)、イギリス(UK100)といった世界中の指数にも広げて「地域分散」させたら、もっと利益が上がるんじゃないか?というアイデアを試してみたんです。 例えるなら、「投資の卵は一つのカゴに入れるな」という格言のように、リスクを分散させれば、もっと安定して、かつ大きなリターンが得られるんじゃないか?と考えたわけですね。
どんなアイデア?
私たちのEA「v1.2.0」は、いくつかの「スリーブ(部品)」を組み合わせて動いています。その中の一つ、「指数スリーブ」は、今のところ米国の3つの指数(US500、US100、US30)に特化しているんです。これらの指数は、お互いの動きがかなり似ている(専門的に言うと「相互相関0.76と高い」)ので、もっと地域を広げて分散させたら、全体の成績が良くなるんじゃないか?というのが今回の検証の出発点でした。 具体的には、ドイツ(DE40)、日本(JP225)、イギリス(UK100)の指数も追加して、合計6つの指数で運用することを考えました。そして、それぞれの指数にどれくらいの予算を割り振るか(「予算再配分」)も最適化すれば、月利(毎月の利益率)をさらに押し上げられるんじゃないか?という期待があったんです。
どうやって試した?
まずは、現在のv1.2.0の指数スリーブが、本当にちゃんと機能しているかを確認するところから始めました。EAの各部品を細かく分解して、現在のv1.2.0の成績(+152.7%の総利益、最大ドローダウン-10.0%、PF1.45)を再現できるかをテストしたんです。 ※「ドローダウン(DD)」とは、資産が一時的に減った最大の幅のこと。登山で例えるなら、「どれだけ下りに転じたか」のようなものですね。 ※「PF(プロフィットファクター)」は、総利益を総損失で割った値。1を超えると黒字で、数字が大きいほど効率よく稼げている証拠です。 結果、ちゃんと再現できたので、この「分解」と「再現」の仕組みは問題ない、と判断しました。 次に、先ほどお話ししたように、新しく非米国の指数(DE40、JP225、UK100)を加えて、「世界6つの指数」で運用した場合の成績をシミュレーションしてみました。さらに、それぞれの指数への予算配分も色々なパターンで試して、一番良い組み合わせを探したんです。 この時、EAの各スリーブ(部品)が、お互いにどれくらい似た動きをするか(「相関行列」)も詳しく調べました。これは、各部品がバラバラに動いてくれる方が、全体のEAとしてはリスク分散が効いて安定しやすいからです。
結果はどうだった?
システム全体のドローダウンの意外な正体!
検証を進める中で、実はとても大切な発見がありました。 EA全体の「システムドローダウン」の本当の原因は、「core(核となる取引ロジック)」と「sat2(トレンドを追いかけるロジック)」という、別の2つのスリーブの相関が0.54と高いことだったんです。つまり、この2つの部品が似たような動きをするために、一緒に調子を崩しやすい、ということが分かったんですね。 一方で、今回の主役だった「指数スリーブ」は、他のスリーブ(「Connors」や「カレンダー」といった、それぞれ別のロジックを持つ部品)と同じように、システム全体のドローダウンにはほとんど影響していませんでした(相関はわずか0.10)。 これはつまり、**「指数スリーブは、システム全体のドローダウンのボトルネックではない!」**という重要な教訓を示しています。例えるなら、風邪をひいて熱が出ているのに、原因がウイルスなのに、栄養ドリンクの種類を変えても根本的な解決にはならない、といった感じでしょうか。
地域分散は逆効果だった!
そして、今回のメインテーマだった「地域分散」の結果ですが…残念ながら、期待とは裏腹に、逆効果であることが判明しました。 驚くべきことに、現在採用している米国の3つの指数(US500/US100/US30)が、個々で見たときに圧倒的に高品質だったんです!PFは5.38、Sharpe(シャープレシオ=リスクあたりのリターンを示す指標。高いほど効率が良い)は0.87という、非常に優秀な成績を叩き出していました。 それに対し、新しく追加を検討した非米国の指数(DE40、JP225、UK100)は、個々で見ると品質が低かったんです。これらを混ぜて「世界6つの指数」として運用すると、全体のPFは2.27へと低下してしまいました。 確かに、地域分散によって指数間の相関は下がりました(0.76から0.34へ)。しかし、それ以上に「品質の低いものを混ぜてしまったことによる損失」が大きかったんですね。 具体的な月利の比較(最大ドローダウン10%に換算した場合)を見てみましょう。
- 米国の3指数のみ: +1.16%
- 米国の3指数 + 日本(JP225)のみ: +1.07%
- 世界6指数: +0.92%
- Connorsも混ぜた場合: +0.87% ご覧のように、米国の3指数のみで運用するのが、一番高い月利を叩き出していたんです。 さらに、EAの安定性を評価する「モンテカルロシミュレーション(MC)」の結果も、世界6指数にすると92%から88%へと低下してしまいました。MCは、様々な不測の事態を想定してEAの安定性を検証する手法で、数値が高いほど信頼性が高いと言えます。 「じゃあ、品質の良さそうなものだけ選んで、米3指数と日本(JP225)だけを組み合わせたらどうだろう?」と試してみたのですが、それでも月利は+1.07%と、元の米3指数単独の成績を超えることはできませんでした。
ここから学んだこと
今回の検証から、非常に重要な教訓が得られました。
指数スリーブの改善は、システム全体のボトルネック解決にならない
先ほども触れましたが、指数スリーブはシステム全体のドローダウンのボトルネックではなかったんです。だから、ここを地域分散で改善しようとしても、システム全体のドローダウンが緩むことはありませんでした。むしろ、質の低い部品を加えてしまったことで、全体の成績を悪くしてしまった、という結果になったんですね。 例えるなら、優秀な野球チームのエースピッチャーが原因じゃないのに、そのエースをベンチに下げて、他の選手を試したら、チーム全体が弱くなってしまった…といった感じでしょうか。 予算の再最適化も、様々な組み合わせを試してみましたが、どのパターンもv1.2.0の月利(+1.16%)を超えるものはなく、「Calmar(カルマー比率=最大ドローダウンに対する年平均リターンを示す指標。高いほど良い)」も天井に張り付いたような状態でした。
最終的な結論
今回の徹底的な検証の結果、私たちはある重要な結論にたどり着きました。 それは、現在の「v1.2.0」が、リスク分散とリターンのバランスを考えると、現時点での「分散フロンティアの天井」に達しているということです。つまり、今できる範囲では、これ以上月利を大きく押し上げることは難しい、ということが分かりました。 もし、さらに月利を押し上げたいと考えるなら、EAの「core」と「sat2」という部分の相関(0.54)を下げる、つまり「核となるトレンドを追う部分」と「本当に動きが全く違う、新しい利益源」を見つける必要があります。 しかし、これは価格データ以外の情報(例えば、カリーや金利差など、いわゆる「価格外データ」)を使う必要があり、一般的なプロップEA(価格データのみを参照するEA)では参照できない領域の話になってしまいます。 したがって、価格データだけで、安全かつ安定して運用できる範囲においては、現在のv1.2.0(月利約0.68%複利、最大ドローダウン-10%、モンテカルロ92%)が、今のところ最善手であるということが、今回の検証で改めて確認できました。 この結果を受けて、現在のシステムに変更は加えません。指数スリーブにおいては、米国の3指数を採用しているのが正しかったと、今回の検証で再確認できたため、非米国指数は不採用とします。 今回の検証は、期待通りの成果は得られませんでしたが、私たちEA開発チームにとっては、現状のEAの強みと限界を深く理解する、非常に貴重な機会となりました。これからも、より良いEAを目指して、地道な研究を続けていきますので、どうぞご期待ください!
この検証のつながり
この検証は、過去の次の検証を踏まえています(前回ダメだった→今回こうした、別ロジックとの比較など)。