
伝説の「ブレイクアウト戦略」をEA基盤で徹底強化!
別プロジェクト fto の最高到達点 = breakout_h1(H1 long-only Donchian en30/ex25 + SMA150 + SL3.0ATR, 7ペア[XAU/USDJPY/EURJPY/AUDJPY/GBPJPY/CHFJPY/NZDJPY], overlay)。**E
本記事は「伝説の「ブレイクアウト戦略」をEA基盤で徹底強化!」の検証を、はじめての方にも分かるようにまとめたものです。

図: ブレイクアウトのエントリー例(XAUUSD 日足・実データ)。直近の高値を上抜けたところで買います。
今回の研究では、以前から注目していた「breakout_h1(ブレイクアウト・エイチワン)」というFX自動売買(EA)の戦略を、私たちのEA検証基盤で徹底的にクロス検証し、さらに強化できる点がないかを調べてみました。
どんなアイデア?:あの「ブレイクアウト戦略」を徹底深掘り!
今回検証の主役となった「breakout_h1」は、実は別の研究プロジェクト「fto」で最高のパフォーマンスを出した実績のある戦略なんです。具体的には、H1(1時間足)でトレンドのブレイクアウト(価格が一定の範囲を突き抜けること)を狙うロング(買い)専用のEAで、Donchian en30/ex25(ドンチャンチャネルという指標の30期間エントリー/25期間エグジット)、SMA150(150期間の単純移動平均線)をフィルターに使い、SL3.0ATR(3倍のATRという変動幅を示す指標を損切りラインに設定)でリスクを管理します。対象通貨ペアは7種類(XAU/USDJPY/EURJPY/AUDJPY/GBPJPY/CHFJPY/NZDJPY)と幅広いのが特徴ですね。
面白いことに、私たちのEAプロジェクトでも、このbreakout_h1と全く同じ戦略が、独立した研究から自然発生的に「デフォルト設定」として採用されていたんです! まさに「同じ戦略に収束した」という、ちょっと運命的な出会いを感じました。
今回の検証では、この戦略を私たちのEA基盤で「厳密なゲート」を通すような形で審査しました。特に重要だったのは、ftoプロジェクトと「全く同じAxioryの過去データ」を使いつつ、「別のエンジン(EAのバックテストシステム)」で検証した点です。これにより、データによる誤差ではなく、EAのロジックやコスト計算の違いがどう結果に影響するかを正確に比較できたんです。
補足:データについて大事なお知らせ!
実は当初、「ftoとEAでは独立したデータを使っている」と考えていたんですが、詳細に調べたところ、なんとFXの過去データはバイト単位で同じAxioryのリアルデータだったことが判明しました! これは「HistData系ASCII」というフォーマット名が、データの出所ではなく「形式」を指していたため、誤解していたんですね。
つまり、今回の研究は「独立したデータで検証」ではなく、「同一のAxioryデータを使って、EAという別のエンジンで、より細かいM1(1分足)レベルまで踏み込んで再検証した」ということになります。この検証方法だからこそ、データ以外の要因(EAエンジンの計算方法、コスト約定モデル、ドローダウンのスケール、フィルターの扱い方など)による数値の差を洗い出すことができたんですよ。
どうやって試した?:EAの厳しい目で「本当に使えるか」をチェック!
私たちは、このbreakout_h1戦略が「本当に実戦で通用するのか」「もっと強く、安全にできないか」を確かめるため、以下のような厳しい条件でテストを行いました。
- 同一のAxioryデータ使用: 実際の相場に近いデータで検証。
- EA独自のエンジンでのテスト: ftoとは異なる、より厳密な約定(トレード成立)モデルやコスト計算を適用。
- M1(1分足)レベルの検証: 普段の取引では見落としがちな、より細かい時間軸でのリスクや挙動も徹底的にチェック。
- モンテカルロシミュレーション(MC): ランダムな要素を加えて、未来の不確実な相場でも通用するかをシミュレーション。
- 前進検証(フォワードテストに似た考え方): 過去のデータで最適化した設定が、未来の未知の相場でも機能するかを確認。 これらの方法で、戦略の耐久性や隠れたリスクを炙り出すことを目指しました。
結果はどうだった?:期待と裏切り、そして新たな発見!
検証の結果、驚くべき事実や、私たちが考える「真の強化ポイント」が見えてきました。
期待外れだった2つの「強化策」
ftoプロジェクトでは、breakout_h1をさらに強化するアイデアとして2つのレバー(追加機能)が提案されていましたが、私たちのEA基盤で検証したところ、これらは**残念ながら「有害」**であることが判明しました。
- ショート・スリーブ(売り戦略の組み合わせ)はまさかの「お荷物」に!
- ftoの主張:ロング(買い)戦略にショート(売り)戦略を組み合わせることで、リスク調整後のリターンが約2倍になり、相関が-0.18(逆の動きをするのでリスクヘッジになる)とされていました。まるで「買い」の保険として「売り」を少し加えるようなイメージですね。
- EAでの検証結果:ところが、私たちの検証では、ショート単体ではインサンプル(IS: 過去のデータで最適化した期間)でもアウトオブサンプル(OOS: 未知のデータ期間)でも純粋なマイナスになってしまいました(OOSで-17.5%、ISで-43.3%)。さらに、ロングとショートの相関も-0.05と、ほとんど無相関でヘッジ効果は期待できませんでした。結果として、このショート・スリーブを加えると、全体の効率(PF=プロフィットファクター、総利益÷総損失。1を超えると黒字)が5.04から3.80へと単調に悪化。モンテカルロシミュレーションでも成績が悪化してしまいました。
- 要するに: このショート・スリーブは、リスクを減らすどころか、まるで足かせのようにパフォーマンスを下げてしまう「純ドラッグ」だったんです。以前の研究(研究25C、48)で「短い時間軸での売りは期待値がマイナスになりがち」という結果が出ていましたが、今回もそれを再確認する形となりました。同じデータを使っているので、「データが違ったから」という言い訳はできません。これはデプロイ(実際の運用)は非推奨とさせていただきます。
- 「overlay(フィルター)」は逆に効率を下げてしまった!
- ftoの主張:
overlayというフィルターを適用することで、ドローダウン(DD: 資産の最大減少幅)が32%から20%へ非対称に削減されるとされていました。これは、相場の悪い時期を避けることで、下落幅を抑えるようなイメージです。 - EAでの検証結果:ところが、私たちの検証では、
overlayをオンにすると、なんと効率が9.40から5.04へと半減してしまいました。リターンも+284%から+159%へと大きく減少したにもかかわらず、ドローダウンはほとんど変わらなかったんです。 - 要するに:
overlayはドローダウンを削減するどころか、稼ぐチャンスまで削ってしまい、結果的に効率を悪化させていた、という結論です。以前のEA研究52でもoverlayが改善効果を持たないことが示されていましたが、今回もそれに一致しました。overlayはOFFにするのが正解です。
隠れていた「リスクの落とし穴」を発見!
今回の検証で最も重要だった発見は、ftoで推奨されていたリスク設定(1ペアあたり0.3〜0.5%)だと、実際の運用で大きなリスクに直面する可能性があったということです。
- fto推奨のリスク設定で
breakout_h1を運用すると、M1(1分足)レベルでの監視では、日次で-5%の損失に抵触する可能性が判明しました。これは、プロップファーム(資金提供を受けて運用する会社)などの厳しい日次ドローダウンルールに違反する水準です。例えば、リスク0.004(1ペアあたり0.4%)だと最悪3日で11.55%の損失、リスク0.003(1ペアあたり0.3%)だと3日で8.95%の損失が出る可能性がありました。実際に2024年4月29日のUSDJPY介入日や金価格の急変動時に、このリスクに抵触するケースが見られました。 - 要するに: ftoで推奨されていたリスク設定は、私たちのEAの厳密なM1レベルでの検証では**プロップファームのルール上は「過大」**だということが分かりました。
- M1レベルでの日次ドローダウンを0に抑える安全なリスク上限は、1ペアあたり約0.0015%であることが分かりました。これは、fto推奨の1/2〜1/3のレベルです。このリスク設定だと、総リターン+75%、DD-12.3%、モンテカルロシミュレーションも安定した結果が得られました。
カレンダースリーブはほぼ効果なし
以前、カレンダースリーブ(特定の日や週、月などの時期にパフォーマンスが良くなる傾向を利用した戦略)の追加も検討しましたが、今回の検証では、相関は0.28と微かにありましたが、全体のパフォーマンス向上への寄与は極めて小さく、リターンは11年で+3.7%増と微々たるものでした。効率やモンテカルロシミュレーションの結果もほとんど変化がなく、ほぼ無効という結果に。これは、以前のEA研究31・32の「カレンダー効果は本物だが、その規模は極小」という結論と一致しています。
ftoのパフォーマンスが再現しなかった理由
ftoプロジェクトが主張していた月利+2.62%、DD9.4%というパフォーマンスは、私たちのEAエンジン(より厳密な約定モデルやコスト計算)では残念ながら再現しませんでした。breakout_h1(ロング+overlay)の戦略では、DD10%換算で月利+0.42%〜+1.40%(ftoの約半分〜1/6)となり、生ドローダウンは-25%〜-38%とかなり大きな値でした。
- ドローダウンの食い違いの真の原因診断!
- なぜこんなにドローダウンが大きいのか、私たちは徹底的に原因を探りました。「もしかして、金(XAUUSD)の動きが特殊だからでは?」と疑い、金を除外して検証してみましたが、ドローダウンは-37.4%とほとんど変わりませんでした。次に、「2025〜2026年のデータに何か問題があるのでは?」と疑い、その期間を除外してもドローダウンは-37.9%と不変でした。
- 要するに: この-38%という大きなドローダウンの正体は、金や特定の期間の汚染によるものではなく、**7通貨ペアが不調期に同時に逆行してしまう「相関ドローダウン」**だったんです!これは、まるで登山で全員が同時に足を滑らせて転んでしまうようなもので、複数通貨ペアを組み合わせるリスクが浮き彫りになりました。
ここから学んだこと:より強く、より安全なEAへ!
今回の徹底検証から、私たちはbreakout_h1戦略を本当に強く、そして安全にするための3つの重要なポイントを導き出すことができました。
- プロップファームのルールに合った「安全なリスク」への是正
- fto推奨の1/2〜1/3、具体的には1ペアあたり約0.15%のリスク設定にすることで、M1レベルでの日次-5%抵触リスクを回避できます。これは、実際の運用で致命的な損失を避けるために非常に重要です。
overlay(フィルター)はOFFにする
- 効率を下げてしまうことが分かったので、潔くオフにすることで、戦略本来の稼ぐ力を最大限に引き出します。
- ショート・スリーブ(売り戦略の組み合わせ)は棄却する
- パフォーマンスの足かせになることが判明したので、この要素は組み込みません。
そして、実はこれらの学びは、私たちの「EA Core System v1.2.0」にすでに組み込まれています。このシステムは、
breakout_h1と同じトレンドの核を持ちながらも、H1/H4/D1といった複数の時間軸(マルチタイムフレーム=MTF)に分散させることで、日中の集中リスクを下げ、M1レベルでも安全な運用を目指しています。さらに、overlayはオフにし、指数(株式指数)やサテライト戦略(EA Core Systemと相関の低い補完戦略)、カレンダー効果など、**真に無相関なスリーブ(分散効果のある戦略)**を組み合わせることで、より安定した増強を実現しています。 今回の検証で、ftoプロジェクトで保留されていた2つのレバー(ショート・スリーブとoverlay)は、私たちの独立した検証によって不採用となり、私たちのEA設計がいかに各選択において優位であるかが実証された形です。 補足:ftoプロジェクトへの還元 今回の検証は、ftoプロジェクトにも貴重なフィードバックを提供できたと考えています。同じAxioryデータを使っても、EAエンジンではアウトオブサンプル期間(2015-2020年)で純ドローダウン(-10.6%)が発生したことは、ftoのDD10%スケールやoverlayの扱い、理想的な約定モデルと、EAの厳密なコスト計算やM1レベルでの検証の間に「エンジン差」があることを示しています。また、この戦略が特定の相場環境(2021年以降の円安・金高騰)に偏重しているというfto自身の警告も、改めてその重要性が確認されました。ftoではすでに実機補正値(月+2.62%)を採用しており、エンジン差は既知の範囲ではありましたが、私たちのEAの新規貢献は、ftoが未計算だったM1レベルでの「日次-5%抵触」リスクを発見したことにあると考えています。 今回の研究を通じて、私たちはbreakout_h1戦略の強みと弱みを深く理解し、より現実的で安全な運用方法を見つけることができました。これからも、このような地道な検証を重ねて、皆さんに安心して使っていただけるEAを提供していきたいと考えています。
この検証のつながり
この検証は、過去の次の検証を踏まえています(前回ダメだった→今回こうした、別ロジックとの比較など)。