
水平線の『付近』は何pipsまでか、答えを測った
読者の方から「チャート上のラインには反応の遅れや、少しだけ突き抜ける『だまし』があるから、ラインそのものに幅(許容帯)を持たせるべきではないか」という指摘をいただきました。
読者の方から「チャート上のラインには反応の遅れや、少しだけ突き抜ける『だまし』があるから、ラインそのものに幅(許容帯)を持たせるべきではないか」という指摘をいただきました。 これまでは水平レベル(水平線)に対してのみ、この幅をロバストネス軸(パラメータをあえて変化させて、どの範囲でも機能するかを確認する手法)で検証していましたが、斜めの線であるチャネルやトレンドラインの帯幅については、十分に検証できていませんでした。そこで、今回はこの帯幅を広げたり狭めたりして、改めて検証を行いました。
チャネルにおける帯幅調整の影響
チャネルの「近接帯」を、従来の1.0 ATRから1.5 ATRへと広げて前進検証(過去データで最適化した設定を、別の期間のデータでテストすること)を行いました。
| チャネル設定 | 検証結果(通算) | 勝ち年の一貫性 |
|---|---|---|
| 1.0 ATR(従来) | -6.8% | - |
| 1.5 ATR(今回) | +15.7% | 3/6年 |
| 結果を見ると、近接帯を広げることで通算利益がプラスに転じました。しかし、勝ち年の一貫性は6年中で3年のみ。水平レベルが5/6年で勝っていることを考えると、チャネルの頑健性(相場環境が変わっても安定して機能する力)は水平線に一歩譲ります。また、エンジン内部の「タッチ帯」を広げると、PF1.08、DD(資産の山からの下落率)-14%と、低品質な線が乱立してしまい逆効果でした。チャネルは幅調整でプラスにはできますが、過剰最適化(特定の期間に合わせすぎてしまうこと)の気配が残ります。 |
トレンドラインの再評価と「死因」の特定
以前、研究60でトレンドラインを「デプロイ(運用導入)不可」と判断しましたが、今回その原因を探りました。検証の結果、トレンドラインの帯幅はD1(日足)で崩壊したものの、H1(1時間足)やH4(4時間足)では広い範囲で機能していることが分かりました。
- H4:5/6年でプラス、通算+8〜12%
- H1:4/6年でプラス、通算+21〜53% つまり、過去の「デプロイ不可」という評価は、トレンドラインそのものがダメだったのではなく、ショート側の戦略やD1の構造的な弱点、M1(1分足)での抵触などが重なった結果でした。ロングのみに限定すれば、トレンドラインには本物の頑健な優位性(エッジ)があることを確認できました。
運用システムへの昇格判断
ロング専用のトレンドライン戦略を正式なゲート(運用可否の判断基準)にかけました。M1日中での検証では、最悪の日次損失率も許容範囲内に収まり、安全性は確認できました。しかし、肝心の収益面で課題が残りました。
- H1:PF1.08、DD -18.7%、MC(モンテカルロ合格率=プロップ合格確率を推定した値)最大損失失格23%
- H4:PF1.01(ほぼ利益なし)
- 合算:PF1.06、DD -21% PFが1.0〜1.1と低く、DDも大きめです。また、既存の核となる戦略との日次相関が0.42〜0.51と高く、トレンドを追いかける性質が似通っています。これでは、現在の核戦略を補完するような分散効果は期待できません。 以上のことから、ライン系戦略の帯幅パラメータは将来のために資産として残しますが、今回のトレンドライン戦略は確定システムには昇格させず、既存の「Core v1.2.0」を据え置くことにしました。今回の検証で、研究60や75の評価に一部訂正が必要であることは判明しましたが、実利面で既存の核を上回るものではないという結論です。
この検証のつながり
この検証は、過去の次の検証を踏まえています(前回ダメだった→今回こうした、別ロジックとの比較など)。
- 一目均衡表とSupertrend、EAにして勝てるのか
- 教科書のライン・ブレイク手法を数値化して測った
- 水平線の重要度を数値にする仕組みを作った
- 裁量教材を機械化したらPF1.05、水平線の数値化だけがPF1.63で本物だった
関連コード(再現用)
この検証は以下のスクリプトで再現できます(リポジトリ参照)。
scripts/research/study_trendline_long_gates.py