
EAの目覚め!効くラインを数値化、勝てる仕組みの進化
ユーザー指摘「裁量は勘でなく論理。効いているラインは数値化でき、低自由度の解釈可能指標なら統計的に勝てる(=裁量の根拠と同じ。MLの過学習とは別)」を受け、基盤を進化。
本記事は「EAの目覚め!効くラインを数値化、勝てる仕組みの進化」の検証を、はじめての方にも分かるようにまとめたものです。

図: ブレイクアウトのエントリー例(XAUUSD 日足・実データ)。直近の高値を上抜けたところで買います。
今回は、以前から読者さんからいただいていた「裁量トレードで『効いている』と感じる水平線(サポート・レジスタンスライン)って、実は数値化できるんじゃないの?」という鋭いご指摘に応えるべく、私たちのEA検証基盤を大きく進化させた研究のお話です!
どんなアイデア?
FXの裁量トレーダーさんなら、「このラインはよく効く!」とか「何度も反発してるから重要だ」と感じる瞬間がありますよね。でも、その感覚って、どうやってEAに教えてあげたらいいんだろう?これが今回の研究のスタート地点でした。 私たちは、この「効いているライン」という感覚を、EAが理解できる形に数値化できないかと考えたんです。具体的には、
- 「レベル・エンジン」の導入: 水平線(サポート・レジスタンス)を自動で認識し、その「効き具合」を数値化してくれる新しい仕組みを開発しました。
- 「レベル重要度」の算出: そのラインがどれくらい強力なラインなのかを数値で表す指標です。具体的には、価格がそのラインにどれだけタッチしたか、そこからどれだけ強く反発したか、といった要素を積み重ねて算出します。
- 「未来を見ない」ルール: EAの検証ではとっても大事なことなんですが、未来のデータは一切見ずに、過去の限られた情報だけで判断する仕組みなんです。これ、未来を先読みしちゃったらズルになっちゃいますからね! そして、私たちのEA「YosugaDow(よすがダウ)」に、この「レベル重要度」を取り入れました。「min_level_score(最小レベルスコア)」という設定値を追加して、**「ある程度、効いていると判断されたラインの近くでしかエントリーしない」**というフィルターをかけたんです。これで、無駄なエントリーを減らし、勝率を上げられるんじゃないかという仮説を立てました。
どうやって試した?
まずは、新しく作った「レベル・エンジン」を私たちの検証システムに組み込みました。そして、「YosugaDow」というEAに、先ほどご紹介した「min_level_score(レベル重要度)」の閾値(ボーダーライン)を設定できるようにしました。 検証には、EAの未来予測能力を見るためのとても重要なテストである**「前進検証(Walk Forward Test)」**を使いました。これは、過去のデータでEAの設定を最適化(調整)し、その設定でまだEAが見たことのない未来のデータで実際に利益を出せるかを試す、厳しいテストなんです。 今回は、水平線(サポート・レジスタンス)の重要度が「オフ(フィルターなし)」の場合と、「重要度10以上」「重要度25以上」「重要度50以上」の4つのパターンで、それぞれ前進検証を行いました。
結果はどうだった?
前進検証で初の「頑健性突破」!
これが今回の研究で最も興奮したポイントです!
- フィルターなし(OFF)の場合: 6年間中4年間でプラスになり、通算で+25.9%の利益でした。
- 重要度10以上の場合: 6年間中4年間でプラスになり、通算で**+45.3%**と、利益が大きく伸びました!
- 重要度25以上の場合: なんと、6年間中5年間でプラスになり、通算で+27.2%の利益でした。これは、私たちが設定している「未来の相場でもちゃんと利益を出せるか(6年間中5年間でプラス)」という、EAの**「頑健性(ロバスト性)」**を見るための厳しい基準を、押し目買い・押し目売り系のEAで初めて突破したことを意味します!
- 重要度50以上の場合: 残念ながら、取引回数が大幅に減ってしまい、通算で+1.9%と、ほとんど利益が出ませんでした。 この結果を見ると、重要度が低すぎても高すぎてもダメで、中程度の「重要度10〜25」あたりが一番美味しい「スイートスポット」だったんですね。ちょうど、グラフにすると逆U字型になるようなイメージです。 また、検証に使った期間(インサンプル)では、重要度フィルターの閾値を上げていくと、PF(プロフィットファクター=総利益÷総損失。1を超えると黒字)が1.05から1.26へと単調に改善し、DD(ドローダウン=資産が一時的に減る最大幅)も-17.6%から-9.0%へとほぼ半分に減らせました。これは、フィルターが有効に機能している証拠です。
「偶然じゃない」ことを徹底的に確認!
「もしかしたら、たくさんのパターンを試した中で、たまたま良い結果が出ちゃっただけじゃないの?」という心配(「多重検定のまぐれ」と言います)もありますよね。そこで、私たちはさらに徹底的に、様々なパラメータの組み合わせで「パラメータ頑健性ガントレット」というテストを行いました。 その結果、15種類の異なる設定でテストしたところ、なんと14設定で前進検証が通算プラス、かつ6年間中5〜6年間でプラスという、非常に安定した結果が出たんです! これは、以前、私たちが「本物の頑健優位性(エッジ)」と認定した「金Donchian」というEAの研究⑯と同じような、**「これは偶然じゃない、本物の優位性がある証拠!」**と言えるパターンなんです。
本番化に向けた最終チェックの結果は?
さらに、実運用に移行するための最終チェック項目(「本番ゲート」と呼んでいます)も確認しました。
- 相関性: 他のEAとの動きの連動性を示す相関は+0.52でした。これは、素のYosugaDowの+0.65からは少し低下しており、他のEAと比べて動きが独立している部分が増えたことを意味します。完全に独立した新しい優位性ではないものの、分散投資の材料としては期待できます。
- 品質: この「YosugaDow + レベル・エンジン」のPFは1.63、Sharpe(シャープレシオ=リスクに見合うリターンが得られているかを示す指標。高いほど効率が良い)は1.16、DDは-7.8%と、私たちの基幹EAである「核Breakout」のPF1.27/Sharpe1.01/DD-13.3%よりも優れた品質を示しました。
- 実運用シミュレーション(OOSデプロイ): 未知のデータでのシミュレーションでは、+31%の利益、DD-14%、Sharpe0.67と、まずまずの結果でした。
- M1日中テスト: 1分足での日中取引シミュレーションでは、最悪のシナリオでも損失が4.18%に抑えられ、リスクは低いと判断できました。
- モンテカルロシミュレーション(MC): 過去のトレード履歴をシャッフルして、未来の収益変動の幅をシミュレーションするテストです。全体では62%がプラスでしたが、最大損失が19.7%を超えるリスクも示され、実際の運用ではリスク管理(取引ロット数を減らすなど)が重要になりそうです。
ここから学んだこと
今回の研究で、私たちは冒頭で触れた**「裁量で『効いている』と感じる水平線は、低自由度でも数値化でき、統計的に勝てる優位性(優位性)になり得る」という読者さんの仮説を、事実として実証することができました!** 「YosugaDow」のような押し目買い・押し目売り系のEAで、「前進検証5-6/6」と「パラメータ頑健性」の両方をクリアしたのは、これが初めての快挙なんです。 今回開発した「レベル・エンジン」は、人間の熟練トレーダーが「ここは効くラインだ!」と判断する感覚を、EAに教えて機械化できたようなもの。これは、今後のEA開発において非常に重要な、恒久的に使える基盤資産になると考えています。 このEAの性質としては、「トレンドに乗ってエントリーするタイミングをより精緻にした」というイメージです。完全に新しい相場の歪みを見つけたわけではありませんが、高Sharpe(シャープレシオ)であるため、運用資金の増え方(エクイティカーブ)がなめらかになりやすく、心理的な負担が少ないという大きなメリットがあります。また、部分的とはいえ他のEAとは異なる動きをするため、複数のEAを組み合わせたポートフォリオに加えることで、全体の安定性を高める「分散材料」としても期待できます。 今後は、このシステムを他のEAと統合することで、ポートフォリオ全体のSharpeやモンテカルロシミュレーションの結果がどう変化するのか、さらに検証を進めていきます!
この検証のつながり
この検証は、過去の次の検証を踏まえています(前回ダメだった→今回こうした、別ロジックとの比較など)。
関連コード(再現用)
この検証は以下のスクリプトで再現できます(リポジトリ参照)。
btengine/levels.py