
既存EAをスキャル化!短期足で取引優位性は増すのか?
確定エッジ BreakoutLong(long)/ DonchianBreakout(両建て)を**同一パラメータのまま**TFを H1→M30→M15→M5 と下げ、挙動とコスト感度を検証(robust5・2019-2025・per-symbolスプレッド込み)。
本記事は「既存EAをスキャル化!短期足で取引優位性は増すのか?」の検証を、はじめての方にも分かるようにまとめたものです。

図: ブレイクアウトのエントリー例(XAUUSD 日足・実データ)。直近の高値を上抜けたところで買います。
FXの自動売買(EA)に興味がある皆さん、こんにちは! 今回の研究テーマは「既存のトレンドフォロー型EAを、もっと短い時間足で動かしたらどうなるんだろう?」という疑問です。普段、比較的長い時間足で安定して動いているEAを、あえてスキャルピング寄りの短期足で試してみたら、もしかして取引回数が増えて利益チャンスも増えるかも?という期待を込めて、検証してみました!
どんなアイデア?
私たちは普段、相場の大きな流れに乗って利益を狙う「トレンドフォロー型EA」というものを使っています。これは、じっくりとトレンドを追いかけて、大きな利益を狙うタイプのEAなんです。 今回のアイデアは、この安定したトレンドフォロー型EAの設定(パラメータ)は一切変えずに、時間足(TF=TimeFrame)だけをどんどん短くしていったらどうなるか?というもの。具体的には、H1(1時間足)で動かしているEAを、M30(30分足)、M15(15分足)、M5(5分足)へと切り替えて、その挙動と「コスト感度」(取引コストにどれだけ強いか)を調べてみました。 検証に使ったEAは、買いエントリーだけをする「BreakoutLong」と、買いも売りも両方する「DonchianBreakout」の2種類。2019年から2025年までのデータを使って、スプレッド(売値と買値の差)も考慮した、より現実に近い条件でテストしています。
どうやって試した?
ステップ1:時間足をどんどん短くしてみた!
まずは、買いエントリー専門の「BreakoutLong」EAを、H1からM30、M15、M5へと時間足を短くして、過去のデータで動かしてみました。設定は全く変えていません。 さらに、買いと売りの両方でエントリーする「DonchianBreakout」EAでも、同じように時間足を短くして試しています。
ステップ2:コストの厳しさを変えてみた!
短い時間足でのトレード(いわゆるスキャルピング寄りの取引)って、実は「コスト」がすごく重要なんです。ちょっとしたスリッページ(注文した値段と実際に約定した値段のズレ)や取引手数料が、利益を大きく左右することもあります。 そこで、それぞれの時間足で、あえて「追加のスリッページ」を設定して、EAがどれくらいコストに耐えられるのか(=コスト感度)も検証しました。これは以前の研究でも、スキャルピング系のEAの生死を分ける重要なポイントだったんですよ!
結果はどうだった?
さあ、いよいよ気になる検証結果です!
時間足を短くしたらどうなった? (BreakoutLongの場合)
まずは買い専門の「BreakoutLong」EAのデータを見てみましょう。
- H1 (1時間足):
- 利益:+31%
- PF (プロフィットファクター):1.36
- DD (ドローダウン):-8.6%
- 取引回数:1428回 H1が今回の基準です。PF(総利益を総損失で割った値。1を超えると黒字)が1.36と安定していて、DD(資産が一時的にどれだけ減ったかを示す指標。登山でいう「どれだけ下りに転じたか」のようなもの)も-8.6%と比較的抑えられていますね。
- M30 (30分足):
- 利益:+37%
- PF:1.19
- DD:-16.2%
- 取引回数:約2倍に増加 H1より利益は少し増えましたが、PFは1.19に落ち、DDは-16.2%と、なんと倍近くに悪化してしまいました。取引回数は増えています。
- M15 (15分足):
- 利益:+13%
- PF:1.02
- DD:さらに悪化
- 取引回数:約6倍に増加 利益はさらに減り、PFも1.02と、かろうじて黒字を保っているレベル。DDはもっと大きくなっています。
- M5 (5分足):
- 利益:-77%
- PF:0.76
- DD:-85%
- 取引回数:18755回(H1の約13倍!) なんと、-77%もの大赤字!PFも1を下回り、完全にコスト負けで「完全コスト死」という状態です。取引回数は激増していますが、利益には全くつながりませんでした。 全体的な傾向として、時間足を短くするほど、取引回数は激増し、平均的なポジション保有時間は短くなりましたが、PFはどんどん悪くなり、DDはどんどん大きくなるという「単調劣化」の結果になったんです。残念ながら、まるで坂道を転げ落ちるようにパフォーマンスが悪くなっちゃった、というイメージですね。
両建てタイプ (DonchianBreakout) の場合はもっとひどかった!
買いと売りの両方でエントリーする「DonchianBreakout」EAでも試したのですが、結果はさらに悲惨でした。 H1では+25%と、かろうじて利益が出たものの、M5ではなんと「-100%=全損」という恐ろしい結果に…。これは、売りのポジション(ショート)が、取引コストや「ダマシ」(一時的な逆行)に非常に弱く、全体の足を引っ張ってしまった、ということがわかります。以前の研究でも、ショートの難しさは同じような結論が出ていたんですよ。
コストの厳しさを変えたらどうなった?
次に、追加のスリッページを加えた場合の「コスト感度」を見てみましょう。
- M5 (5分足):
- 元々赤字でしたが、少しでもスリッページを追加すると、PFはさらに0.48まで落ち込み、もう「何をしても死」という状態でした。
- M15 (15分足):
- PF1.02とギリギリ黒字だったM15も、たった0.5pipsのスリッページを加えただけで、PFが1を切って赤字に転落(0.96)してしまいました。つまり、かなり理想的な取引環境でしか、かろうじてプラスに見えるだけだった、ということなんです。
- M30 (30分足):
- M30は比較的耐性があり、+1pipsのスリッページまでならPFが1.10と、まだ黒字を保てました。一番マシな結果と言えますね。
ここから学んだこと
今回の検証で、はっきりと分かったことがあります。それは、**「既存のトレンドフォロー型EAを、単純に短い時間足で動かすだけでは、良い結果にはならない」**ということです。
- M5 (5分足) は完全にコスト負け。以前の研究(研究㉕や㊻)で他のスキャルピングEAが崩壊したのと同じ現象が、このトレンドフォロー型EAでも起きてしまいました。
- M15 (15分足) は、現実的な取引コストを考えると、ほとんど優位性(優位性(エッジ))がない、という結論です。
- M30 (30分足) は、かろうじて利益は出ましたが、H1(1時間足)と比べると、PFは下がり(1.36→1.19)、DDはほぼ倍に悪化(-8.6%→-16.2%)。つまり、「H1の劣化版」と言わざるを得ない結果です。 私たちが目指しているのは、安定した利益を低ドローダウン(DD)で出すこと。今回の結果は、この目標とは逆方向を向いていました。 最終的な教訓として、やはり、安定して利益を出すには、H1(1時間足)、H4(4時間足)、D1(日足)といった、比較的長い時間足で、じっくりとトレンドを追うのが正しいアプローチだ、ということが再確認できました。 今回の検証を受けて、既存のEAの設定や運用方針を変更することはありません。これからも、確かなデータに基づいた検証を続けて、皆さんに正直な情報をお届けしていきますね!
この検証のつながり
この検証は、過去の次の検証を踏まえています(前回ダメだった→今回こうした、別ロジックとの比較など)。