
トレンドライン・ブレイク後、回帰の「1波」に優位性?
仮説: トレンドライン(直近2スイングを結ぶ線)をブレイク→いったん線へ回帰(リターンムーブ)→出る「1波目」を取る。継続A(ブレイク方向=地合い)/転換B(ブレイク方向=地合いと逆)× long-only/両建て の4バリアントを honest比較。
本記事は「トレンドライン・ブレイク後、回帰の「1波」に優位性?」の検証を、はじめての方にも分かるようにまとめたものです。

図: ブレイクアウトのエントリー例(XAUUSD 日足・実データ)。直近の高値を上抜けたところで買います。
今回の研究では、「トレンドライン・ブレイク→回帰→1波」という、ちょっとユニークなEAのアイデアを検証してみました。これは、価格がトレンドラインを突き破った後、いったんそのラインに戻ってきて、そこからまたブレイクした方向に動き出す「最初の勢い(1波目)」を狙う、という戦略なんです。
どんなアイデア?
このEAの基本的なアイデアは、こんなイメージです。
- トレンドラインをブレイク!: まず、価格がこれまで続いていたトレンドライン(直近の山と谷を結んだ線)を勢いよく突き破ります。
- いったん戻ってくる(リターンムーブ): その後、すぐにそのトレンドラインのところまで価格が戻ってきます。まるで「ちょっと行きすぎたかな?」と確認しに戻るように。
- そして、また進む最初の波を掴む!: 戻ってきた価格が、再びブレイクした方向に動き出す、その「最初の一歩」を利益としていただこう、というわけですね。 この動き、まるで登山道でいうと「道からちょっと逸れたけど、また元の道に戻って、さらに進む一番最初の足取りを掴むようなイメージ」でしょうか。 今回は、このアイデアをさらに細かく分けて、4つのパターンで試してみました。
- 継続A: ブレイクした方向が、その時の相場の大きな流れ(地合い)と同じ場合
- 転換B: ブレイクした方向が、相場の大きな流れと逆で、トレンド転換を狙う場合
- これらをさらに「買いだけ(ロングオンリー)」で攻めるか、「買いと売り両方(両建て)」で攻めるか。
合計4種類のEAを作って、公平に比較検証したんです。
トレンドラインを引くロジックも、未来の情報を先読みしないように、厳密な方法(
indicators.trendlines()という独自指標を使いました)で設計しました。
どうやって試した?
このEAは、「ブレイク→リテスト(線への回帰)→1波」という3つの段階を踏んでエントリーするロジック(3段ステートマシン)で動いています。 そして、今回の検証では、EAが本当に通用するのかを厳しくチェックするために、いくつかの「門(ゲート)」を用意しました。
- 完全前進検証: 過去のデータで最適化した後、その後の未知の期間で実際に利益が出せるかを確認するテスト(未来の相場で通用するかを見るシミュレーションですね)。
- パラメータ頑健性テスト: EAの設定値(パラメータ)を少し変えても、安定して利益が出せるかを確認するテスト。特定の数値にだけたまたま成績が良い「まぐれ」ではないかを見極めます。
結果はどうだった?
さて、気になる結果です。最初は「お、これはイケるぞ!」という期待が膨らんだのですが、最終的には残念な結果に終わってしまいました…。
最初の期待と喜び
まず、朗報からお伝えしましょう! 「A継続・両建て」のパターンが、最初の「完全前進検証」と「パラメータ頑健性テスト」という2つの重要なゲートを見事に通過したんです! 具体的には、6年間の運用で通算+44%の利益率を達成し、**最大ドローダウン(一時的な最大損失)も-3.0%**と非常に優秀でした。ドローダウンは、登山でいう「どれだけ下りに転じたか」のようなもの。これが少ないほど、リスク管理がしっかりできている証拠です。 さらに、H1(1時間足)での設定値を少し変えても、安定して利益が増える(+10%〜+50%)ことも確認できました。これは「まぐれ」ではなく、EAに一定の優位性(エッジ)(優位性)がある証拠だと考えられます。 ちなみに、トレンド転換を狙う「B転換」のパターンは、残念ながら最初の段階で良い結果が出ませんでした。やはり逆張りは難しいですね。
残念ながら、落とし穴が…
しかし、喜びもつかの間。残りの厳しいゲートで、このEAは決定的に脱落してしまいました…。
(1) 時間足を変えるとダメだった(TF頑健性なし)
H1(1時間足)では良い成績でしたが、より長い時間足(H4=4時間足、D1=日足)で試してみると、成績がガタ落ちしてしまったんです。
- H4(4時間足)では通算-1.9%
- D1(日足)ではなんと通算-6.9%で、6年間で一度も勝ち越せませんでした。 これは、このEAが「H1の時間足特有の細かな値動きにたまたま合っていただけで、本物のトレンドを捉える力がなかった」という可能性を示唆しています。本当に優秀なトレンド系のEAは、時間足を変えても、ある程度は機能するはずなのですが…。
(2) 短期足では大失敗(M1日中で即失格)
さらに致命的だったのは、M1(1分足)での日中のテストです。 日中の細かい値動きの中で、なんと1日で-5%以上の損失を4回も出してしまい、すぐに失格となってしまいました。 大きな時間足のテストでは見えなかった問題が、短い時間足の検証で露呈する典型的なパターンですね。特に「両建て」戦略が、日中の相場が逆行する時に、かえって損失を大きく増幅させてしまったことが原因だと分かりました。
(3) 毎年EAを選び直さないとダメ(再選抜依存)
そしてもう一つ、大きな問題が発覚しました。 このEAの好成績は、「毎年、その年にたまたま調子の良かったEAを(過去のデータを見て)選び直している」からこそ出ていた、という事実です。 もし「2015年から2019年にかけて一番良かったEAを一つ選んで、それを6年間ずっと運用し続ける」という固定運用をすると、プロフィットファクター(PF=総利益÷総損失。1を超えると黒字)は1.04とギリギリ黒字。そして、**最大ドローダウンは-24.9%**と非常に大きく、運用開始から数年で資金が大きく減ってしまう結果に。 これは、安定した「優位性(優位性)」があるわけではなく、たまたま過去の相場に合っていたEAを後追いで選んでいるだけ、ということなんです。これでは、長期的に安定して利益を出すことは難しいですよね。
ここから学んだこと(そして、ロングのみ版の再挑戦)
今回のEAはデプロイ不可
残念ながら、今回の「トレンドライン・ブレイク→回帰→1波」EAは、最初の期待とは裏腹に、実戦投入はできないという結論に至りました。 「最初の2つのゲート(前進検証とパラメータ頑健性)は通過したものの、その後の時間足頑健性や短期足での日中テストで脱落」という結果は、やはり「安定して利益を出し続けるには、長期的な上昇トレンドをしっかり捉えるEAが強いんだな」という、これまでの研究で得られた教訓を再確認する形となりました。 しかし、今回の検証は無駄ではありませんでした。見かけの好成績に騙されず、多段階の厳しい審査(前進検証→パラメータ→時間足→短期足→資金管理)によって、最終的にデプロイできないEAを正しく見つけ出せたことは、我々の検証基盤がしっかりと機能している証拠だと考えています。
もしかして「ショート」が足を引っ張っていた?
過去の研究で「ショート(売り)戦略は、長期的に見ると利益を圧迫する傾向がある」という結論が出ていました。そこで、「もしかしたら、今回のEAもショート側が足を引っ張っているのでは?」と考え、最後に「ロングのみ」のバージョンでもう一度検証してみました。 その結果、いくつか改善が見られました! 特に、M1(1分足)での日中テストで問題だった「1日で-5%以上の損失」は、ショート側が相場と逆行して損失を増やしていたことが主因だと判明し、ロングのみにすることで、この損失が解消され、失格となる日もゼロに! H4(4時間足)での成績も改善しました。 しかし、残念ながら、致命的な問題は残ったままです。
- D1(日足)では依然として崩壊した成績(通算-3.2%)。
- 最大ドローダウンは-22.8%と大きく、仮に運用しても資金管理のルール(最大損失-10%で失格)に抵触してしまいます。
- プロフィットファクター(PF)も約1.05と薄く、リスクを下げてドローダウンを-10%に抑えようとすると、年利がわずか1.3%程度まで縮小してしまい、実用的な利益は期待できません。
規律的な打ち止め
「ロングのみ」にしても、結局デプロイは不可能という結論です。これ以上、設定をいじり続けたり、フィルターを重ねたりしても、それは「過去のデータに合うように調整しているだけ(データマイニング)」になってしまい、本当に通用するEAにはならないでしょう。 そのため、今回の「トレンドライン・ブレイク→回帰→1波」のアイデアは、ここで潔く打ち止めとします。 ただ、今回使った「トレンドラインを引く仕組み」自体は、また別の新しいアイデアで活用できる可能性もあるので、将来のために残しておきたいと思います。 今回の研究も、皆さんのEA選びや検証の参考になれば幸いです!
この検証のつながり
この検証は、過去の次の検証を踏まえています(前回ダメだった→今回こうした、別ロジックとの比較など)。