
人気トレンド指標!一目均衡表とSupertrendのEA優位性は?
指標追加():(転換/基準/先行スパンA・B, 雲はshift(26)で過去データのみ=リーク無し)、(ATRトレーリング型, 確定バンドで判定)。両戦略ロングオンリー。
本記事は「人気トレンド指標!一目均衡表とSupertrendのEA優位性は?」の検証を、はじめての方にも分かるようにまとめたものです。

図: ブレイクアウトのエントリー例(XAUUSD 日足・実データ)。直近の高値を上抜けたところで買います。
今回の検証テーマは、FXトレーダーにも人気の高い「一目均衡表(いちもくきんこうひょう)」と「Supertrend(スーパートレンド)」という2つのトレンド系インジケーター。これらを使った自動売買(EA)が、どれくらいのパフォーマンスを見せるのか、そして既存のEAと比べてどんな特徴があるのか、じっくり調べてみました!
どんなアイデア?
今回注目したのは、どちらも相場のトレンド(方向性)を捉えるのに役立つと言われる2つの指標です。
- 一目均衡表(Ichimoku): これは日本のトレーダーが生み出した、転換線、基準線、先行スパンA、先行スパンB、そして「雲」と呼ばれる5つの線で構成される複合的なインジケーターです。今回は「雲」の部分は過去のデータだけを使って、未来の情報が混ざらないように工夫して検証しました(これを「リーク無し」と言います)。相場の方向性や転換点を視覚的に分かりやすく教えてくれるのが特徴ですね。
- Supertrend: こちらは「ATR(Average True Range = 平均真の変動幅)」という、相場の値動きの幅を示す指標を使ったトレーリングストップ(利益が出たら損切りラインも動かして、利益を確保していく仕組み)型のインジケーターです。明確な買いサインや売りサインのラインが表示されるので、トレンドの転換点を見つけやすいと言われています。 どちらも「トレンドを追いかける」という考え方は同じですが、それぞれどんな動きをするのか、どんな成績になるのか、とても気になりますよね。今回はどちらの指標も、買い(ロング)方向のみで利益を狙う「ロングオンリー」のEAとして試してみました。
どうやって試した?
今回の検証は、以下の条件で行いました。
- 検証期間: 2015年から2024年までの約10年間。
- 通貨ペア: 主要な8つの通貨ペアで同時に動かす「ポートフォリオ」(複数のEAや通貨ペアを組み合わせてリスク分散を図る方法)形式で検証しました。
- 時間足: 主に4時間足(H4)と日足(D1)でデータを分析。
- パラメーター: 検証期間中、EAの設定(パラメーター)は一切変更せず、固定した状態で検証を進めました。これは、過去のデータに合わせて設定をいじりすぎないようにするための大切なルールなんです。
結果はどうだった?
まずは、それぞれのインジケーターを使ったEAがどんな成績を出したのか、見ていきましょう!
4時間足(H4)での結果
既存の「BreakoutLong」というトレンド系EAの基準(総利益+13.6%、Sharpe0.22)と比べてみました。
- 一目均衡表(Ichimoku):
- 総利益: +42.9%
- PF(プロフィットファクター): 1.11(総利益を総損失で割った値。1を超えると黒字で、高いほど優秀です)
- Sharpe(シャープレシオ): 0.45(リスクに見合うリターンの効率性を示す指標で、高いほどリスクを抑えつつ利益を出せていると言えます)
- 勝ち年数: 10年間のうち7年がプラスで終えました。 → 既存のEAを上回る、なかなか良い成績ですね!
- Supertrend:
- 総利益: +49.1%
- PF: 1.14
- Sharpe: 0.48
- 勝ち年数: 10年間のうち6年がプラスで終えました。 → こちらも一目均衡表と同様に、既存のEAよりも良いパフォーマンスを見せてくれました!
日足(D1)での結果
- 一目均衡表(Ichimoku):
- 総利益: +11.1% → 日足でもプラスの成績。堅実な印象です。
- Supertrend単体:
- 総利益: -5.4% → 残念ながら、単体ではマイナスになってしまいました…。
- Supertrend + SMA150(150期間の単純移動平均線):
- 総利益: +10.5%
- PF: 1.35 → しかし、単体でマイナスだったSupertrendも、SMA150という別のトレンド指標と組み合わせることで、プラスの成績に改善しました! 他の指標と組み合わせることで、EAのパフォーマンスが変わるというのは面白いですね。 ここまでの結果だけを見ると、「お、一目均衡表もSupertrendも、なかなか優秀なEAになりそうじゃないか!」と感じるかもしれません。でも、ここからが今回の検証の本当に大切な部分なんです。
ここから学んだこと
衝撃の事実!既存EAとの「相関」が高すぎた
今回の検証で最も重要な発見は、一目均衡表とSupertrendを使ったEAが、既存の「BreakoutLong」というEAと、日々の成績の動きが非常に似ていた、という点です。 具体的には、日々の成績の相関係数が0.82〜0.86(4時間足・日足ともに)という高い数値を示しました。相関係数というのは、2つのデータがどれだけ一緒に動くかを示す数値で、1に近いほど動きがそっくり、という意味なんです。 身近な例で言うと、これはまるで「登山で同じルートを、違うブランドの靴で登っているだけ」のようなもの。目的地にはたどり着けるかもしれませんが、新しい景色が見られるわけではありませんし、もし道が閉鎖されたらどちらの靴でも登れない、という状況に似ています。 つまり、今回の2つの指標は「新しい、これまでとは違う利益の源泉(これをFXの世界では『優位性(エッジ)』と呼びます)」を見つけたわけではなかった、ということなんです。以前の検証(研究㊿)でも、相関が0.64程度でも分散効果が期待できなかったので、これだけ高い相関だと、複数のEAを組み合わせる「ポートフォリオ」に加えても、リスク分散の効果はほとんど期待できない、という結論になりました。 簡単に言うと、一目均衡表やSupertrendは確かに「トレンドを追いかけるEAとして利益を出せる力(本物のトレンドフォロー・優位性)」は持っているけれど、すでに私たちが使っているEAと「考え方や動きがほぼ同じ」なので、新しい仲間として加えるメリットは少ない、ということが分かりました。 これは「価格の動きだけで利益を出せるロジックは、結局みんなトレンドフォローにたどり着き、互いに似たような動きになるんだな」という、私たちの仮説を裏付ける結果になったとも言えますね。
既存システムへの組み込みは?まさかの「全面悪化」!
「それなら、今使っているEAの『トレンドの入り口』を、BreakoutからIchimokuに変えたらどうなるだろう?」という派生検証も行ってみました(研究56)。 結果は、なんと**「全面悪化」**でした!
- 月平均利益: 0.47% → 0.38% に減少
- 最大ドローダウン(DD): -9.0% → -12.6% に悪化(ドローダウンとは、資産が一時的に減る最大幅のこと。登山でいう「どれだけ下りに転じたか」のようなものです)
- MC(モデリングクオリティ): 85.1% → 72.8% に低下(EAのバックテストの信頼性を示す指標で、高いほど良いとされます)
- PF: 1.30 → 1.15 に悪化
- トレード回数: 約2.3倍に増加(これは取引手数料などのコスト増につながります) なぜこのような結果になったのでしょうか? 検証の結果、一目均衡表の「基準線割れ」を出口(損切りや利益確定のポイント)として使うと、頻繁に損切りが発生し、ドローダウンが膨らんでしまうことが分かりました。 つまり、「単体で良い成績を出せるインジケーター」と、「複数の時間足やロジックを組み合わせた、堅牢なシステム」は別物だ、ということなんです。「4時間足単体でシャープレシオが高くても、既存の安定したシステムにそのまま組み込めるわけではない」という、とても大切な教訓を得ることができました。 この結果を受けて、現在のシステムに変更を加える必要はない、という最終的な判断になりました。
まとめ
今回の検証で、一目均衡表とSupertrendは単体で見ればトレンドフォローEAとして十分な力を持っていることが分かりました。しかし、既存のトレンド系EAと動きが酷似しており、ポートフォリオに加えても分散効果は期待できません。また、既存システムへの組み込みを試みたところ、かえって成績が悪化するという結果に。 新しいインジケーターを試す際は、単体の成績だけでなく、「既存のシステムとどう組み合わせるか」「本当に新しい優位性があるのか」といった視点も非常に重要だということが再確認できましたね!
この検証のつながり
この検証は、過去の次の検証を踏まえています(前回ダメだった→今回こうした、別ロジックとの比較など)。
関連コード(再現用)
この検証は以下のスクリプトで再現できます(リポジトリ参照)。
scripts/research/study_final_ichimoku.py