
勝ちトレンド追撃!爆益ロジックに落とし穴?
エンジンをマルチポジション対応に拡張( Order.pyramid / Context.positions・ratchet_sl / リスト化)。
本記事は「勝ちトレンド追撃!爆益ロジックに落とし穴?」の検証を、はじめての方にも分かるようにまとめたものです。

図: ブレイクアウトのエントリー例(XAUUSD 日足・実データ)。直近の高値を上抜けたところで買います。
今回は、FX自動売買(EA)で「ピラミッディング」という手法を試してみました!これは、簡単に言うと「勝ちトレンドにさらにポジションを追加していく」ことで、利益を大きく伸ばそうというアイデアなんです。 「本当に『勝ち馬に乗る』ことで利益を最大化できるのか?」 「でも、その分リスクも大きくなるんじゃないか?」 そんな疑問を検証してみたので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね!
どんなアイデア?
ピラミッディングとは、まさに「勝ちトレンドに、さらに乗り続ける」という戦略です。 FXトレードをしていると、たまに大きなトレンドが発生することがありますよね。ぐんぐん価格が上がっていく(あるいは下がっていく)相場です。 ピラミッディングは、そんな「強いトレンド」を見つけたら、最初にエントリーしたポジションだけでなく、さらに追加でポジションを持つことで、まるで雪だるま式に利益を増やしていこう!という考え方なんです。 イメージとしては、サーフィンで大きな波に乗れた時に、途中でボードを乗り換えてさらに大きな波に乗り続けるような感じでしょうか。うまくいけば、ものすごいスピードで遠くまで行けそうですよね!
どうやって試した?
このピラミッディングをEAで実現するために、まずはEAの「心臓部」とも言えるシステムを大きく改良しました。
具体的には、今まで1つの通貨ペアにつき1つのポジションしか持てなかったEAを、複数のポジションを同時に持てるように拡張したんです(core/types.pyやcore/strategy.pyなどの内部プログラムを修正しました)。
もちろん、この改良によって、もともと動いていたEAの動きが変わってしまうと困りますよね。なので、既存のEAが以前と全く同じ動きをするか、しっかり確認する「回帰チェック」も合格済みです。これで安心して新しい機能を試せる準備が整いました。
今回試したのは、「タートル流」と呼ばれる有名なトレーディング戦略をベースにした「PyramidBreakout」という戦略です。
この戦略は、簡単に言うと次のステップで動きます。
- ブレイクアウトで参入: 相場が新しい高値(または安値)を更新して、トレンドが始まりそうなタイミングで最初のポジションを取ります。
- 利益が出たら追加: その後、利益が出て相場がさらに有利な方向に動くたびに、
ATR(Average True Range = 相場の変動幅を示す指標)という値を使って、決められた単位(ユニット)で追加のポジションを持っていきます。ただし、最大で持てるポジションの数には上限(max_units)を設定しました。 - それぞれの損切り: 追加した各ポジションには、それぞれ
ATRを基準にした損切り(ストップロス)を設定します。 - トレンド終了で全決済: そして、トレンドの勢いが弱まったり、逆方向に転換する兆候が見えたら、持っているすべてのポジションを決済して利益を確定します。 まさに「勝ち馬に乗り続けて、利益を最大化する」という仕組みですね。
結果はどうだった?
さて、いよいよ気になる検証結果です。
一見良さそうに見えたけど…
最初の結果を見ると、確かにピラミッディングのアイデア自体は良いように見えました。
EAの性能を示す指標の一つである「ret/DD(リターン・ドローダウン比率)」、つまり「利益と最大損失のバランス」が、通常のEA(ベースライン)と比べて改善したんです。
- ベースライン: 11.7
- ピラミッディング: 14.5〜20.2 これだけ見ると、「やっぱり勝ち馬に乗るのは正解だ!」と感じますよね。
しかし、予想外の落とし穴が!
ところが、さらに詳しく見ていくと、大きな問題が見つかりました。 それは、ドローダウン(DD = 資産の最大下落幅)が激増してしまったことです。
- ドローダウン激増: -31%〜-53%
ドローダウンは、登山で例えるなら「どれだけ下りに転じたか」のようなもの。せっかく高い山に登っても、途中で大きく下りてしまうと、精神的にも資金的にもかなり厳しいですよね。この数値は、私たちのEA運用で許容できる範囲をはるかに超えていました。
さらに、リスクに対するリターンの効率性を示す「
Sharpe Ratio(シャープレシオ)」も悪化(1.02から0.84〜0.96へ)してしまいました。これは、リスクの割にリターンが効率的ではない、ということなんです。 そして、利益を追いかけるように損切りラインを動かす「トレーリングストップ」も、ピラミッディングではほとんど機能せず、大破綻という結果になってしまいました。
安定運用(prop)には向かないと判明
今回の検証は、私たちが目指す「安定したEA運用(継続的な出金や厳しい資金管理ルールを前提とした運用)」に耐えうるか、という視点で行いました。その結果、ピラミッディングは、この安定運用には決定的に不向きであることが判明しました。 たとえ「1ポジションあたりのリスク」を最大限に絞っても、以下のような厳しい結果が出たんです。
- 最大ドローダウン: -18%〜-28%
- 日中の最悪ドローダウン: -11.6%〜-19.9%
- 一日あたりの損失ルール(例えば「1日-5%超禁止」など)に抵触した日数: 9日〜19日 これは、安定運用を目指す上で致命的な数値です。特に「日中のドローダウン」が非常に大きく、多くの資金管理ルールで設定される「一日あたりの最大損失」という安全ラインを、頻繁に超えてしまうことがわかりました。 なぜこんなことになったかというと、ピラミッディングは「トレンドに資金を集中させる」手法なので、トレンドが反転したときに、積み上げた含み益が一気に吹き飛んでしまうリスクが非常に高いんです。 月間の利益率は上がる(0.58%〜0.90%)ものの、その安全度は壊滅的と言わざるを得ません。結局、現行の安定版EA(確定システム)の数値(最大ドローダウン-7.1%、日中ドローダウン4.06%、一日あたりの損失ルール抵触0日)と比べると、ピラミッディングは大きなリスクを抱えていることが浮き彫りになりました。 この結果は、「見かけの最大ドローダウンだけでは判断できない、日中の細かい動きこそが本当のリスク制約になる」という、以前の研究(研究52)で得た教訓を再確認する形にもなりましたね。
今回の実験から学んだこと
ピラミッディングは安定運用には不向き
今回の検証で、ピラミッディングは大きなトレンドに乗れたときの利益は魅力的なものの、安定して継続的に利益を出すEA運用には向かないという結論に至りました。利益を追求するあまり、リスクが大きくなりすぎてしまい、資金管理のルールと構造的に矛盾してしまうんですね。 結局、現状ではピラミッディングを使わない、元のEAが最も安定していて良い、という結果になりました。
でも、技術的な進化はありました!
残念な結果に終わったピラミッディングですが、今回の実験で得られた大きな収穫もあります。それは、私たちのEAのシステムが「複数のポジションを扱える」ように大きく進化できたことです。 この「マルチポジション対応エンジン」は、今後、
- 部分利確: 利益が出ているポジションの一部だけを決済して、残りはさらに伸ばす。
- 非安定運用目的: もっとリスクを取れるような、安定運用を目的としない場面での活用。
- その他、様々な新しいルール: など、将来的なEA開発の強力な基盤となるはずです。 今はまだ使い道が見つからなくても、この技術的な進歩は決して無駄ではありませんよ!
安全に「月2%」はやっぱり難しい?
今回の結果は、以前の研究(研究52)と合わせて、「安全なドローダウンの範囲内で、価格情報だけを基に月2%の利益を出すのは、やはり困難な道のりだ」ということを再認識させてくれました。レバレッジを上げるだけでは限界があり、ピラミッディングのような積極的な手法も、安定運用との両立は難しいことがわかったからです。 引き続き、安全かつ効率的なEAの探求は続いていきます!これからも新しいアイデアをどんどん試して、検証結果を皆さんにお届けしていきますので、楽しみにしていてくださいね。
この検証のつながり
この検証は、過去の次の検証を踏まえています(前回ダメだった→今回こうした、別ロジックとの比較など)。