
金(XAUUSD)攻略の新常識?2つのエントリーで利益倍増?
ATRcandle long + Breakout long(既存)を別ブック独立運用→口座合算()。XAUUSD H4 クリーン。
本記事は「金(XAUUSD)攻略の新常識?2つのエントリーで利益倍増?」の検証を、はじめての方にも分かるようにまとめたものです。

図: ブレイクアウトのエントリー例(XAUUSD 日足・実データ)。直近の高値を上抜けたところで買います。
今回は、金(XAUUSD)の自動売買(EA)について、既存のブレイクアウト戦略に新しいエントリー方法を組み合わせて、もっと利益を安定させられないか?というアイデアを検証してみました。
どんなアイデア?
私たちのEAには、すでに金(XAUUSD)の「ブレイクアウトロング(買い)」という戦略が組み込まれています。これは、価格が一定のラインを上に突き破ったら買いでエントリーする、というおなじみの手法ですね。 今回試してみたのは、「この既存のブレイクアウト戦略に、もう一つ別の買いエントリー戦略を組み合わせたらどうなるだろう?」というアイデアです。具体的には、「ATRcandleロング」という新しい戦略を導入してみました。 「ATR」というのは「Average True Range」の略で、相場の値動きの幅を示す指標のこと。このATRを使ったローソク足(candle)の形を見て、買いでエントリーする戦略なんです。 もし、この2つの戦略がそれぞれ違うタイミングで利益を出してくれたら、全体としてリスクが分散されて、もっと安定した利益になるんじゃないか?という期待がありました。
どうやって試した?
検証は、2015年から2024年までの約10年間、金の4時間足(H4)チャートを使って行いました。 システム上、同じ金(XAUUSD)というシンボルで、同時に2つの買いポジションを持つことができません。そこで、既存のブレイクアウト戦略と新しいATRcandle戦略を、それぞれ別のEAとして独立させて動かし、それぞれの損益を最後に合算して全体のパフォーマンスを評価することにしました。 イメージとしては、2人の登山家がいて、それぞれ別の道を登っているけれど、最終的に山頂で合流して、2人分の荷物を合わせて評価する、みたいな感じですね。
結果はどうだった?
さて、肝心の検証結果です。今回は、以下の3つのパターンでパフォーマンスを比較してみました。
- A単体: 新しい「ATRcandleロング」戦略のみ
- B単体: 既存の「ブレイクアウトロング」戦略のみ
- Combo: AとBを組み合わせたもの
それぞれの結果を、リターン(利益率)やドローダウン(最大損失率)、PF(プロフィットファクター)などの指標で見ていきましょう。
パターン リターン(ret) 最大ドローダウン(DD) シャープレシオ(Sharpe) プロフィットファクター(PF) A単体 5.41 (+60.5%) -11.2% 0.90 1.44 Combo 4.86 (+43.4%) -15.9% 0.65 1.30 B単体 2.59 (+27.6%) -17.6% 0.36 1.15 この結果を見ると、意外なことがわかりますね。 なんと、2つの戦略を組み合わせた「Combo」は、一番成績が良かった「A単体(ATRcandleロング)」よりも成績が悪くなってしまいました。 つまり、今回の「金ロングの2エントリー多様化」は、残念ながら期待した付加価値を生み出すことはできなかった、という結論になったんです。
なぜうまくいかなかったのか?
この結果の理由を深掘りしてみると、主に2つのポイントが見えてきました。
- 日次相関が0.64と高かった
- 「相関」というのは、2つのものがどれくらい似た動きをするかを示す数値です。1に近いほど似ていて、0に近いほどバラバラ、-1に近いほど逆の動きをします。
- 今回のA戦略とB戦略は、毎日(日次)の損益の動きが「0.64」と、かなり似ていたんです。例えるなら、友達と2人で登山に行って、1人が転んだらもう1人も転びそうになる、みたいなイメージです。これでは、リスク分散の効果は薄いですよね。
- 以前の研究(研究⑳)では、相関が0.00とほとんどない(バラバラな動きをする)戦略を組み合わせたときに効果が出たのですが、今回はそれとは程遠い状況でした。
- 強いAに、弱く相関が高いBを足すと全体が劣化する
- A単体(ATRcandleロング)は非常に優秀な成績でしたが、B単体(既存のブレイクアウトロング)はAほどではありませんでした。
- 成績の良いAに、成績は劣るけれども動きが似ているBを足してしまったことで、全体の成績がBに引きずられて悪くなってしまった、というわけです。
- ドローダウン(最大損失)は、それぞれの単体の合計(-17.6%)よりは少しだけ抑えられた(-15.9%)ものの、十分な分散効果があったとは言えません。
ここから学んだこと
今回の検証から得られた教訓は、とてもシンプルで重要なことでした。 「同じ金(XAUUSD)の買い(ロング)戦略を、ただ2つ組み合わせるだけでは効果が薄い」ということです。もし組み合わせるなら、お互いに利益を出すタイミングが全く異なる、相関の低い戦略を選ぶ必要があります。 むしろ、今回の検証で明らかになったのは、「ATRcandleロング」という新しい戦略が、既存の「ブレイクアウトロング」よりも明確に優秀だったという事実です。
- ATRcandleロング(A単体):リターン5.41、ドローダウン-11.2%
- ブレイクアウトロング(B単体):リターン2.59、ドローダウン-17.6% この結果を受けて、私たちはEAの「金エントリー」戦略を、これまでのブレイクアウト戦略から、今回試した**「ATRcandleロング」に丸ごと置き換える**のが最も良い、という結論に至りました。 実際にプロップファーム(プロのトレーダーを育成・支援する会社)の評価基準で見てみても、このATRcandleロング単体で「リスク0.003」という設定で運用した場合、「+43.4%のリターン、-9.9%のドローダウン」という素晴らしい成績で、最初のステップ(STEP1)をパスできるレベルなんです。最悪の日次損失も1.66%と、リスク管理もバッチリですね。 無闇に戦略を組み合わせるよりも、「より良い単体戦略を見つけて、それを集中して使う」ことの重要性を再認識する検証となりました。
この検証のつながり
この検証は、過去の次の検証を踏まえています(前回ダメだった→今回こうした、別ロジックとの比較など)。