
月利3%はDD70%の賭けで、賢い配分は5方式全部固定に負けた
複数の自動売買システムをどう混ぜ、リスクをどこまで上げられるのか。月利3%目標の定量化、3システム最適ブレンド、動的配分の全敗、改良版での交換レート引き直しまで、4本の検証を1つの物語にまとめました。
「月利3%を出すには、どれだけの下落を覚悟すればいいのか」。この問いに数字で答えを出したら、返ってきたのは70%でした。口座がほぼ確実に消える水準です。そしてもう1つ。相場に合わせて配分を賢く動かす工夫を試したら、5方式全部が単純な固定配分に負けました。
この記事は、複数の自動売買システムの混ぜ方とリスクの上げ幅を定量化した4本の検証(研究70/81/95/127)を1つの物語にまとめたものです。「研究N」は私の検証ノートの通し番号。派手な新手法の話ではなく、運用の背骨になる「月利とリスクの交換レート」の話をします。
はじめに: このブログと用語の説明
初めての方向けに。このブログは、私(個人)がFXの自動売買プログラム(EA)を自作し、手法を統計検証して勝敗問わず記録している検証日記です。検証にはFX・金銀・株価指数の実データ約11年分を使っています。
用語を4つだけ。PF(プロフィットファクター)=総利益÷総損失で、1を超えると黒字。DD(ドローダウン)=資産の山からの下落率で、登山でいう「どれだけ下りに転じたか」。MC合格率=日次リターンを再標本化して、プロップファーム(資金提供会社)の損失ルールをクリアできる確率を推定した値。Calmar(カルマーレシオ)=リターン÷最大DDで、リスクあたりの効率。この最後のCalmarが、今回の主役です。
月利3%の値段を測ったら、それは口座の値段だった(研究70)
出発点は「月利3%必須」という目標でした。コア戦略に指数6本とConnors(短期的な売られすぎの反発を買う手法)を束ね、攻めの度合いを段階的に上げながら、月利とDDの関係を実測しました。
| 月利 | 最大DD |
|---|---|
| 0.6% | 10% |
| 1.1% | 24% |
| 2.0% | 49% |
| 2.65% | 69% |
見ての通り、月利とDDはほぼ比例します。効率を示すCalmarは1.0〜1.3で頭打ちで、配分の最適化や指数・Connorsの追加でも上がりませんでした。DDを10%以内に収めるなら月利の上限は0.6%程度。月利3%まで攻めると、DDは70%に達します。

図: この記事の全ての判断基準になるDD。月利を上げるほど、この谷が深くなっていきます。
なぜ無理なのか。年利36%超をDD10%以内で出すにはCalmar3.6が必要で、これは世界的な超一流ファンドでも維持が難しい水準です。価格と指数から取れるトレンドの優位性(エッジ)の実測値は、どう磨いてもCalmar1.0〜1.3。つまり月利3%を狙うのは「毎月の収入を得る」ことではなく「ほぼ確実に破産する賭け」なんですね。
残された道は3つでした。目標を達成可能な月0.6%程度に置き直して資金規模や口座数で収入を積むか、別のマーケットでCalmarの改善を探すか、一発合格のギャンブルと割り切るか。数字を捏造したシステムは作らない。それがこの検証の一番の約束です。
混ぜる相手を選んだら月利が0.60%から0.82%へ(研究81)
次は「検証済みのシステム同士を混ぜたらどうなるか」です。3つのシステム(コア、satellite=ボリンジャーバンド逆張りの束、satellite2=裁量のダウ理論と水平レベルを機械化したもの)を日次リターンで合成し、DD10%以内で月利が最大になる配分を探しました。相関はコアとsatelliteが0.43、コアとsatellite2が0.47、satellite同士が0.19です。
| 構成(DD10%に揃えて比較) | 月利 | シャープ比 | MC合格率 |
|---|---|---|---|
| コア単体 | 0.60% | 1.17 | 91% |
| コア+satellite2 | 0.82% | 1.25 | 92% |
| シャープ比加重 | 0.72% | - | - |
| 3つ均等 | 0.58% | - | - |
シャープ比(リスクあたりのリターン効率)とMC合格率の両方で、コア+satellite2が最良でした。逆にsatelliteはシャープ比0.38と低く、均等に混ぜると全体が0.58%へ下がります。分散は「何でも混ぜれば良くなる」ではなく、足を引く成分を外すことまで含めて配分なんです。
理論値で終わらせず、同一口座で実際に合算した精密値も確認しました。コア単体が月利0.58%、DD-10.0%、MC91%で11年中9年プラス。コア+satellite2(リスク各0.003)が月利0.78%、PF1.45、DD-11.7%、MC91%で11年中10年プラス。相関があるぶんDDが理論より膨らむので、10%に収めるにはリスクを0.85倍ほどに絞る必要があり、現実的な改善幅はコア単体比で+15%程度でした。
近似計算の+37%は楽観値で、実測は+15%。それでも勝ち年が9年から10年へ増え、安全なDDの範囲で実利が積み上がることは確認できました。
賢く動かす配分は5方式全部負けた(研究95)
混ぜる相手が決まると、次の欲が出てきます。「配分比率を相場に合わせて動かせば、もっと増えるのでは」。コア4戦略+通貨ペア別9戦略の計13本を対象に、固定(均等)配分と、逆ボラティリティ(リスクの低いものに厚く)、リスクパリティ(リスク寄与を均等化)、最小分散、モメンタム(直近好調なものに厚く)、平均分散(統計的に最適な比率を算出)の5方式を、後知恵なしの条件で比較しました。
| 配分方式 | Calmar |
|---|---|
| 固定(均等) | 1.43 |
| 逆ボラティリティ | 1.03 |
| モメンタム | 0.53 |
| 平均分散 | 0.13 |
結果は全敗です。しかも一番数学的に凝った平均分散が最下位の0.13という、皮肉な並びになりました。
理由は2つ考えられます。1つは、もともとの組み合わせが既にバランス良くできていたこと。そこへ配分を傾けに行くと、後出しジャンケンのようなタイミングのズレと将来予測の誤差だけが積み上がります。もう1つは、複雑な方式ほど壊れやすいこと。平均分散は共分散の推定にわずかなノイズが乗るだけで、配分が大きく崩れてしまいます。
じゃあ配分は何もしなくていいの?と思いますよね。少なくともこの5方式に関しては、答えは「はい」でした。固定して放っておくほうが強い。複雑な調整よりシンプルさを維持する強みが、数字ではっきり出た検証です。
改良を積んでから交換レートを引き直した(研究127)
最後に、研究70から改良を重ねた版(v1.5.0)で月利とDDの交換レートを測り直しました。この版にはvol-target(直近の実現ボラティリティに応じたロット調整)や株式・上位足・Connors系の要素が積まれています。全体のリスクを倍率で一律にスケールし、各点で月利、最大DD、MC合格率、M1最悪(1分足で日中の口座推移を再構築したときの最悪の日次損失)を実測しました。
| 倍率 | 月利 | 最大DD | MC合格率 | M1最悪 |
|---|---|---|---|---|
| x1.0 | +0.93% | -9.4% | 96% | 2.42% |
| x1.6 | +1.27% | -13.3% | 91% | 3.73% |
| x2.0 | +1.46% | -15.4% | 84% | 4.56% |
| x2.4 | +1.64% | -17.6% | - | - |

図: 表のMC合格率の測り方。倍率を上げるほど、失格する未来の割合が増えていきます。
注目は2点あります。まず、DD10%以内での月利が0.6%から0.93%へ、約50〜65%向上しました。エッジの積み上げが、同じリスクで受け取れる月利を底上げしたわけです。次に、それでもCalmarの天井は1.0〜1.1のまま変わりません。月利2%を狙えばDDは22〜24%必要という計算で、レバレッジ自体は交換レートを何も変えていない。
実運用のコスト(転移率88〜95%、DD+1.5〜2%)を織り込むと、保守運用で月利約0.8%とMC合格率96%、攻めても月利約1.3%とMC合格率84%あたりが現実的な着地点です。
系譜の結論: 交換レートは変えられない、線上の位置と線の高さは選べる
4本を並べると、構図は1つに収束します。
- 月利とDDの関係はほぼ線形で、傾き(Calmar)がシステムの実力そのもの。レバレッジは線の上を移動する道具にすぎない
- 混ぜ方の正解はシンプル。相性の良い相手を固定比率で足し、足を引く成分は外す。動的に動かす工夫は5方式全てコストにしかならなかった
- 線そのものを上に動かす唯一の方法はエッジ(優位性)を積むことで、実際にDD10%での月利は0.6%から0.93%へ動いた
月利3%という夢から出発して、着地したのは「安全圏で月1%弱を固定配分で淡々と」という地味な数字でした。でもこの地味な数字は、DD70%を覚悟する賭けと違って、11年の実データと破綻確率の計算に裏打ちされています。運用の背骨は派手な工夫ではなく、交換レートの理解でできている。それがこの系譜の結論です。
この記事は研究70/81/95/127を統合したものです。